「社会的孤立」 心臓発作や脳卒中後の死亡率と関連か、調査

スーツケースの横に座り写真を撮る女性(2017年8月21日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / Fabrice COFFRINI〔AFPBB News

 6月18日、政府は認知症施策推進大綱を発表した。「予防」と「共生」を2本柱の目的として掲げ、高齢社会のなかで認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指すことを目標としているものだ。

 ニュースで報道されていたこともあり、私が普段訪問している長屋の高齢者も、「やっぱり認知症に気をつけないと」と語っていた。

 しかし、このような感想を聞くたびに、私は高齢者が安心に暮らせる社会から離れていくと感じる。今回の大綱も、本当に認知症患者の希望につながるかは疑問だ。

 そもそも認知症の予防方法が確立していない。確かに認知症の予防は世界中で注目されており、2017年には世界保健機関(WHO)が、認知症グローバル・アクションプランを策定し、認知症のリスクを軽減するために生活習慣への介入を推奨している。

 しかし、どのような介入がよいかはエビデンスが確立していない。

 この大綱でも、認知症の予防に関しては「運動不足の改善」「社会的孤立の解消」「生活習慣病」が挙げられているが、いずれもこの大綱がターゲットと定めている団塊の世代に対して介入することで認知症が予防できるかどうかはまだ結論が出ていない。

 例えば、運動は運動量が多い人は認知症のリスクが低いという観察研究はこれまでにも多いが、運動不足の人に運動をさせることで認知症リスクが下がるかどうかは結論が出ていない。

 英国サセックス大学のヤング(Young)氏による12報のランダム化試験のメタアナリシスによると、認知機能が正常な55歳以上の被験者に対して有酸素運動による介入を2か月から6か月間行っても、認知機能の改善は認められなかった*1

 英国の35~55歳の公務員を約30年にわたって調査した「Whitehall II Study」のコホートを用いて運動量と認知症の関係を調査した研究によると、認知症と診断された患者は診断から9年以内に運動量が低下していた2

 このことから、運動量の低下は認知症の前駆症状である可能性も示唆されている。もしそうであれば、運動不足に陥った高齢者に介入しても認知症予防には効果がない可能性もある。