第2回の着陸で得られた成果について、津田プロマネも「成熟した技術」を得た点を挙げた。

「やりたいときにやりたいようにやれるのが成熟した技術。十分にコントロールされたリスクのもと、自分たちが望むように着陸し試料を採ることができ、技術的なステップが一段上がった。しかも技術的判断だけでなく組織的、科学的な判断が絡み合う中で、第2回着陸を決断できた。試料を採ることだけではなく、新しい場所で新しいチャレンジをする探査全般に対して重要な実績を残せたと思う」

史上初の2回着陸成功を導いた要因は

葛藤を乗り越え大願を成就し、ホッとした表情を見せる津田雄一プロジェクトマネジャー。

 技術的な判断に加えて組織的・科学的判断が絡み合った今回の着陸。前回の記事では、「小惑星の試料」というお宝を抱えた状態で、第2回着陸を実施するか否かを巡り、はやぶさ2チームが葛藤し、数カ月にわたり検討と議論を重ねたことを書いた。

 第2回着陸成功後の会見で、津田プロマネに「一番苦しかった時期は?」と尋ねた。

 津田プロマネは「ずっと苦しかったので、ピークがどこかと言うのは難しい」と意外な言葉を口にした。いつも穏やかな笑みを浮かべ、どんな苦境に追い込まれても弱音を吐かないように見受けられるが・・・。

「1回目の着陸前から2回目について悩んでいた。2018年6月にリュウグウに到着後、(岩だらけで)着陸がとんでもなく難しいと判明した。でも検討を重ね技術を磨き第1回の着陸が見えてきたとき、第2回着陸につながる技術を1回目に実施することにしました。2回目のために前倒しで実行しようと」

 第2回着陸につながる「技術」とは、ピンポイントタッチダウンだ。灯台のような役割を果たすターゲットマーカーを、あらかじめ着陸地点の近くにおろしておく。はやぶさ2はまず灯台を捉え、その灯台からさらに数m移動した目的地に着陸する。落下するターゲットマーカーを追尾した初代「はやぶさ」より、高度な技術が求められる。はやぶさ2当初の計画では3回目の着陸で実施予定だった精密な着陸方式に、初回から挑戦することにしたのだ。そのトライは見事に成功し、「2回目も行ける!」という自信を得た。先を見越して技術を習得していたのである。

 さらに第2回の着陸に向けて、津田プロマネは「第1回と同じか、それを超えるレベルで実施する自信がありますか」とチームのメンバー全員に問うたという。では津田プロマネ自身は、何が自信になり着陸を決めたのかと聞くと「シミュレーションとリュウグウの地形です」との答え。