津田プロマネは笑みを浮かべ、こう話してくれた。

「まさにその通り。小惑星に人間はまだ行くことはできません。しかし分身なら持って行ける。せっかく持って行くなら、とことん使いこなしたい。どれだけ使いこなせるかは、探査機の設計者と運用者らのチームワークにかかっています」

 とは言え、約3億km離れたはやぶさ2に、「動け」と指令を送ってから実際に動くには、片道13分かかる。分身のようにといっても、難しいのでは?

「それも含めて使いこなす。人間だって脳で考えてから手を動かすには、わずかに時間がかかりますよね。それがちょっと長くなっただけ。準備をすれば、たとえ通信時間が片道1時間になっても使いこなせると思う」(津田プロマネ)

 なるほど分身のように、つまり自分の手足のように探査機を使いこなす感覚だからこそ、これほど精密な動きを実現できるのだと納得。

なぜ2回目の着陸に挑んだのか?

 改めて、2回着陸の意義と、どうやって分身のように探査機を使いこなすに至ったのか、掘り下げていこう。

 はやぶさ2は第1回着陸で、小惑星リュウグウ表面から大量の試料を採取したと見られる。その後、今年4月には銅の塊をリュウグウに衝突させ、直径10mを超える人工クレーター生成に成功。第2回の着陸場所は人工クレーターから北に約20m離れた場所で、クレーター生成時に飛び出した、リュウグウ地下物質が表面を覆っていると推定される。

 そもそもなぜ、着陸を2回行うことがそれほど重要なのか? はやぶさ2プロジェクトサイエンティストである渡邊誠一郎名古屋大学教授は、「リュウグウは小惑星の種類の中でC型(炭素系の物質を主成分とする小惑星)に属します。C型小惑星の試料を持ち帰るのは世界初。だから1回目の着陸で採った物質を持ち帰るだけでも大きな成果だが、地下物質も持ち帰るとなると、今後20年ぐらい他国にはできないことでしょう」と、まずその意義を説く。それほど難しいことをやってのけたということだ。

第2回タッチダウン成功後の記者会見に臨む、渡邊誠一郎名古屋大学教授(左)と津田雄一プロジェクトマネジャー。