4月5日のSCI運用の報告の場で、DCAM3からの画像を見て笑顔を見せたはやぶさ2チーム。

 小惑星探査機はやぶさ2の快進撃が止まらない。前回の記事(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56015)で、小惑星リュウグウに銅の塊を衝突させ、世界で初めて小惑星に人工クレーターを作る実験は、「目隠しをした状態でやぶさめの矢を放ち、的を射るようなもの」であり、難易度が極めて高いアクロバット的な作業であることを説いた。

 当初、はやぶさ2チームはリュウグウの半径200m以内に矢を当てることを目指していた。だが、実際は的からわずか数十mの場所を射抜いたことが判明。命中である。さらに衝突体によって、リュウグウ表面からの噴出物が、分離カメラ(DCAM3)によって撮影された。4月5日の衝突実験当日、下記のアナログ画像が公開されると、詰めかけた報道陣からは「おー!」というどよめきが起こった。

4月5日、衝突実験当日に公開された分離カメラ(DCAM3)の画像。衝突装置(SCI)起爆約2秒後にアナログカメラで撮影された。リュウグウ表面からの噴出物が捉えられている。(提供:JAXA、神戸大、千葉工大、産業医科大、高知大、愛知東邦大、会津大、東京理科大)

 毎回、はやぶさ2は人間達の不安を吹き飛ばし、予想の遥か上をいく結果を届けてくれる。今回も「こんなに立派なイジェクタカーテン(噴出物が作る広がり)がアナログ画像によって見えるとは想定していなかった」と分離カメラ・科学観測などを担当する荒川政彦神戸大学教授が驚くほど。

 津田雄一プロジェクトマネジャーも「この画像を見たときが衝突運用当日の一番のピーク」と喜びを隠さない。「ベストオブベストのシナリオならもしかしたら撮れるかも、と考えていた画像が、不意打ちのように出てきた。(この画像を見たとき)はやぶさ2メンバーから大きな歓喜の渦が沸き上がった」と笑みを浮かべた。

 リュウグウ表面は大小の岩に覆われていて、衝突体が砂の層に当たれば噴出物は大きく舞い上がってクレーターは大きくなり、岩塊に当たれば噴出物は少なくクレーターが小さくなると見られていた。吉川真ミッションマネジャーは「これまで、あまり大きなクレーターはできないのではないかと発言してきた。しかし、この画像を見ると表面にかなりの変化があったことが期待できそう。本当に楽しみ」と、クレーターができたことはほぼ間違いないという見方を示した。

 いったい、どんなクレーターができたのか? そしてはやぶさ2はクレーターの中に降りることができるのか? まずは人工クレーターを調べてみないことには、次の計画が定まらない。