はやぶさ2から分離した衝突装置により、人工的なクレーターができた瞬間の想像図。(提供:池下章裕氏

 小惑星探査機はやぶさ2に、ミッション最大の山場がやってきた。4月5日11時36分(探査機時間、以下同じ)、小惑星リュウグウに純銅製の塊を衝突させ、人工的にクレーターを作るのだ。小惑星への衝突実験は史上初。「針の穴を通すような精密運用」が求められ、「目隠しをした状態でやぶさめで矢を放ち、的を射るようなもの」だという。

 決行の日は4月5日(今日!)。9時44分に最終判断が行われ「GO」となれば、10時56分、はやぶさ2はリュウグウの高度約500mで衝突装置(SCI:Small Carry-on Impactor)を分離する。SCI内蔵のタイマーにより40分後の11時36分に高度約200~300mで点火、約2kgの純銅製のインパクター(衝突体)が秒速2kmの高速でリュウグウに衝突する予定だ。

“半端ない”爆発から全速力で退避せよ

 だが、その歴史的瞬間を、はやぶさ2は目視してはならない。もし見える場所にいれば、噴出物によって「探査機が死ぬ可能性がある」(はやぶさ2プロジェクトエンジニア佐伯孝尚氏)からだ。そこで、はやぶさ2はSCI分離後40分の間に、リュウグウの影に全速力で退避する。その道中、小型カメラ(DCAM3)を放出。インパクターがリュウグウに衝突し内部の物質が吹き上がる瞬間は、DCAM3が捉えるという、極めてアクロバティックな運用だ。

 似たような衝突実験では、2005年にNASAの探査機ディープインパクトが彗星にインパクターを衝突させ、通り過ぎながら観測したことがある。一方、はやぶさ2は衝突実験後にリュウグウ上空に戻り、クレーターを詳細観測する予定で、さらにクレーター内に着陸する可能性もある。初代「はやぶさ」はもちろん、世界のどこもやったことがない超高難度の実験だ。

 SCI開発担当でもある佐伯孝尚氏はSCIについて「非常に“厄介”なもの」とISASニュース2019年1月号で綴る。「SCIは衝突体を加速するために爆薬を使用していますが、その威力が“半端ない”」と。