小惑星探査機はやぶさ2着陸成功後の会見で。右から2人目が津田雄一プロジェクトマネジャー。(筆者撮影)

 2月22日8時29分、人類の手が3.4億km彼方の新しい小さな星に届いた。小惑星探査機はやぶさ2が、小惑星リュウグウの着陸に成功したのだ。

 ただの着陸ではない。大きさわずか900mの小惑星上の、半径3mというごく狭い範囲に狙いを定め、着陸成功したのは世界初。さらに、着地するや否や弾丸を発射。まき上がった砂を採取したのは確実とみられる。これら複雑な作業を、探査機は地上からの遠隔操作に頼らず自律的に行った。パーフェクトな成功だ。

 成功会見で「探査の醍醐味」について津田雄一はやぶさ2プロジェクトマネジャーに聞くと、「誰も行ったことのない場所に行き、誰もやったことがないことをやる。(探査機を持つことは)非常に遠い目と長い手を持ったのと同じで、その手を伸ばして物質を取り地球に持ち帰る。我々の叡智が増え、遠い将来の人類に貢献できることが幸せ。楽しくてしょうがない」とすがすがしい笑顔を見せた。

 ミッションの意義はこの言葉に集約されると思う。はやぶさ2が小惑星リュウグウの砂を持ち帰ることで、太陽系の誕生と進化、地球生命の材料である有機物の解明が進む。しかし未踏の地に長い手を伸ばしふれようとする時、難題が立ちはだかった。

 難題とは? 前回の記事の通り、はやぶさ2は当初100mのエリアに着陸することを想定していた。だが、到着したリュウグウは岩だらけで、どこにも平坦な場所がない。舐めるようにリュウグウ全域を調べた結果、チームが探し出したのは半径3mという狭い領域だった。

【参考】「はやぶさ2のタッチダウン、成功のための4のポイント」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55569

 その難しさを、初代はやぶさのメンバーだったJAXA橋本樹明教授はこう説明する。「(宇宙空間にある)半径3mへの着陸は世界のどこも実現できていない。工学者としては不可能に近く、諦めてもおかしくないレベル」。ちなみに、2021年度打ち上げ予定の月着陸機SLIMが目指す着陸精度は100m。この精度も、まだ世界で実現されていない。小惑星は重力が小さいから、月や火星より着陸に時間をかけられるものの、3億km彼方で誤差3m以内とは、半端ない難易度だ。

初代はやぶさのメンバーだったJAXA橋本樹明教授。(筆者撮影)