津田プロマネ自身が成功要因に強調するのは「チーム力」だ。対等に議論を戦わせ、磨き合い、成長する。仲間と一丸となり、今何を考えないと失敗するかという先を読む力は、学生時代の超小型衛星づくりで培われたとも述べた。

 津田プロマネは東京大学時代、世界初の10cm3の超小型衛星開発でプロマネを務めた。『キューブサット物語』(川島レイ著)によると、度重なる打ち上げ延期に際し、メンバーの士気を保つため津田プロマネが心掛けたのは4点。「ストーリー(意義づけ)」「ノベルティ(新奇性)」「コミットメント(責任感を持たせること)」「スピード」。これらは、はやぶさ2のマネジメントにも生かされているようだ。

着陸成功が拓く、宇宙探査の未来

 今回、半径約3mという狭い領域に、世界初のピンポイント着陸に成功したことで、今後どんな世界が拓かれるのか? 津田プロマネによると「小惑星のような小天体は、近くに行くまでどんな天体か分からない。未知の天体の数mという狭い範囲に着陸できるのは、探査手段として非常に大きなステップアップで、可能性が広がる」と説明。具体的にどんな可能性があるのか。

「特に小天体は科学探査だけでなく、資源探査や、地球に接近して危害をもたらす意味でも注目されている。詳細に、この場所のこれを調べたいという要望が増えるはずです。我々は既に技術を持っている。世界に打ち出していける」と。

 はやぶさ2は初代が成しえなかった関門を突破した。そして今後、さらに難しいミッションが待ち受ける。リュウグウに銅の塊を衝突させて人工クレーターを作り、着陸、地下の物質を採取するのだ。もちろん、史上初の挑戦になる。今回の着陸と同様、チーム一丸となって、しつこく粘っこく食らいついていくだろう。その挑戦の過程を楽しみながら。

 ところで、津田プロマネはこれまで「小惑星リュウグウが牙をむく」という表現をしてきた。着陸に成功した今、改めてリュウグウへの想いを聞くと「牙をむくなんて言って、すみません。まずは『ありがとうございます』。親しみを見せてくれたリュウグウに対して(人工クレーターで)穴を開けるんですけどね(笑)」と笑顔を見せた。

「はやぶさ2」プロジェクト関係者の集合写真。(提供:ISAS/JAXA)