最も気になるのは、表面の砂を採るために探査機から弾丸が発射されたか否か。14年前にサンプル採取を目指した初代はやぶさは、小惑星に着陸したものの、弾丸が出なかった。はやぶさ2から届いたデータから、着陸時刻の7時29分に火工品の温度が約10度上昇したことが判明。発火=弾丸が発射されたと判断される。つまり14年ぶりのリベンジを果たしたことになる。

 実際に試料が採れたかどうかは、「地球に帰還後、玉手箱を開けてみるまで分からない」(久保田孝JAXA研究総主幹)が、初代は弾丸を発射できなかったにもかかわらず微量の試料を持ち帰ったことから、試料が採れているのはほぼ確実だろう。

着陸後会見で、火工品の温度データを示す津田プロマネ。着陸時刻(指先が示すところ)で温度が上昇していることが分かる。(筆者撮影)

成功の3つの要因:敵を知り、自分を知り、作戦を練る

 なぜ、はやぶさ2チームは、これほど完璧な成功を収めることができたのか。その要因について、久保田孝研究総主幹は3つの点を挙げる。

「まず敵を知ること。小惑星リュウグウを徹底的に調べ、詳細な地形を知った。次に己を知ること。はやぶさ2の能力を見極めた。その上で作戦を練り、訓練を繰り返して運用者が熟練したことです」 

 約50回もの運用訓練には、初代はやぶさの経験も生かされた。「初代の経験から起こりうるトラブルを想定し、さまざまなシミュレーション訓練を行った。また、今回はJAXA全体の知見が生かされている。たとえば、国際宇宙ステーション(ISS)への貨物便『こうのとり』は、有人システムのため高い信頼性が求められNASAと膨大な数の運用訓練を行っている。訓練の仕方からアドバイスをもらいました」(橋本樹明教授)

 そして、小惑星滞在期間も見直された。初代はやぶさは小惑星着後、着陸運用が約1カ月しかなく決断を急がされた。その反省から、リュウグウ滞在期間を長くとった。「十分なチーム体制、十分な時間、いい探査機があれば、はやぶさ2は成功すると考えていた。10年間準備して実った」と、初代はやぶさ時に運用を務めた津田プロマネは言う。