当初はアナログカメラだけを搭載する予定だったが、解像度の劣るアナログカメラではイジェクタカーテンが見づらいだろうという判断から、デジタルカメラも急きょ搭載することに。DCAM3担当の澤田弘崇氏は「開発時間が短く、なぜこの時期に?」と泣きそうになりながら開発。はやぶさ2打ち上げ後は、機器の動作テストもできず4年間ずっと不安だったそうだが、パーフェクトに働いた。

 そして最重要視されたのが、はやぶさ2の安全性。SCIを分離後、起爆するまでの40分間に安全な場所に逃げることが求められた。しかも、逃げる途中で分離カメラを放出しながら。「退避に失敗すればSCIの飛散物などが衝突し、探査機が全損する可能性すらあった。難しい運用だったが姿勢制御系もほぼパーフェクトで、探査機を無事に安全なところに退避させることができた」(航法誘導制御担当 三桝裕也氏)。

 津田プロジェクトマネジャーは、衝突運用成功後の記者会見冒頭で「本日、私たちは宇宙探査の新しい手段を確立しました」と宣言した。それは小惑星に行き、その地下状態を調べるために穴を掘ること、しかも穴を掘った現場に戻り、じっくり観測できることを意味する。「小惑星内部を見ることは科学者の夢であり、実現した例は世界にない」(久保田孝JAXA宇宙科学研究所研究総主幹)。

 その夢の観測が、今まさに行われている。さらに、SCIと分離カメラ(DCAM3)のセットで、いち早く小惑星に穴を掘ったことも確認できた。「初代はやぶさが新しい世界を開いたように、はやぶさ2も別の新しい世界を開けた」と津田プロマネは胸を張る。

挑戦するか否か厳しい判断が待ち受ける

4月5日13時15分頃、はやぶさ2から届いた画像からSCI分離を確認、喜ぶチームメンバー。(提供:ISAS/JAXA)

 人工クレーターができたことがほぼ確実視される今、少し気の早い心配は、次のタッチダウンだ。「クレーターが見つかったら、着陸に適しているか否か、クレーターそのものに着陸しなくても、内部からの噴出物があると思われる適切な場所がないかを探す。その上で、1回目のタッチダウンと同じように、着陸のためのターゲットマーカーを置くか、着陸リハーサルを何回行うかなどを決めていく」と津田プロマネは今後の方針を述べた。