着陸時のシミュレーションについては、起こりうるあらゆるトラブルを想定し、10万通りものシミュレーションを走らせた。ところが1回も失敗がない。「それはおかしい。失敗しないはずがない」というメンバーの声で、さらにあり得ない状況を作り上げ「これなら失敗する、ここが限界だ」と割り出した。「よくこんな想定を思いつくな」と津田プロマネが驚くほど意地悪な想定も含めたシミュレーション回数は、100万回を超えたという。「そこまでやったからこそ、どこまでが限界でどこまでなら安心かを事前に割り出すことができた」

 そしてもう1つ、着陸地点の地形。

「これはリュウグウに感謝するしかない。3つぐらい気になる大きな岩があって、最初はサイエンスメンバーが『(岩の高さが)とても高く、着陸はダメかもしれない』と言ってきた。着陸したいなら低く言えばいいのに(笑)。疑い深い彼らが、最終的に(65cm以上あり得ませんと)岩の高さが着陸可能であると結論を出した。地形OK、シミュレーションOK。じゃあやりましょうと」

 数カ月の葛藤を経て挑んだ本番。最初の難関は、はやぶさ2が曇ったレンズでターゲットマーカーを探し出せるか。ふたを開けると、制限時間4分に対して1分以内で捕獲。「探査機が目を開けたらそこにいた」(佐伯孝尚プロジェクトエンジニア)。探査機を正確にターゲットマーカー上空に導く、航法誘導制御技術の賜物である。

 さらに探査機が、ターゲットマーカーを他のものと勘違いせず捉え続けられるかも懸念されていた。きらきら光る物質が画面内に入ると、ターゲットマーカーと間違える可能性があった。カメラ担当は、ターゲットマーカーとゴミをきちんと識別できるよう微調整を繰り返した。

「タッチダウンは一つひとつが難しい技術のバトンタッチ。それぞれの担当が完璧にバトンを次の人に渡してくれた」(津田プロマネ)。

 結果的に、100点満点で1000点の着陸が実現できた。第2回の着陸地点は「うちでのこづち」と名付けられた。

第2回タッチダウン成功を喜ぶ、はやぶさ2プロジェクト関係者の集合写真。(画像:ISAS/JAXA)