(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)
NANDフラッシュメモリは、1987年に、当時東芝に在籍していた舛岡冨士雄氏が発明した半導体メモリである。日本が1980年代に世界シェア80%を独占したDRAMと違って、NANDは電源を切ってもデータが消えない“不揮発”という特徴がある。
NANDは2000年以降に、デジカメ、携帯電話、音楽プレーヤーのiPodなどに使われて、その市場が爆発的に大きくなった。要するに、イノベーションが起きたのである。その後、PCやサーバーなどのコンピュータにも使われるようになり、より一層、市場規模が拡大した。もはやNANDなしに、私たちの文化的生活は維持できない程である。
本稿では、NANDの5~10年後の未来を考える。まず、コンピュータなどに使われる半導体メモリが、年々、集積度の増大を要求されていることを説明する。次に、メモリセルを2次元的に微細化することによって集積度を向上させていたNANDが、3次元化した経緯を述べる。
その3次元NANDは、2018年には縦方向にメモリセルが96層積層されたが、その積層数は2020年に200層を超える。そして、このペースで積層数が増大して行くと、5年後の2024年に1000層を超え、10年後の2029年に8000層を超える事態となる(図1)。
現在の方式による3次元NANDの製造方法では、数百程度の積層数が限界であろう。したがって、NANDの5~10年後の未来を考えると、過去2次元から3次元へと構造を転換したように、何らかのパラダイムシフトを起こす必要があることを論じる。
常に高密度化が要求される半導体メモリ
1965年に、インテルの創業者の1人であるゴードン・ムーアが予言した通り、コンピュータ等に使われる半導体メモリは、年々、集積度を増大させてきた。