謎のメモリ「3D XPoint」(スリーディー・クロスポイント)

 ここ数週間、半導体業界人が寄ると触ると噂話をするホットな話題がある。それは、7月末に、米インテルと米マイクロンが、「1989年のNANDフラッシュメモリ以来のブレイクスルー」と大々的に発表した不揮発性メモリ「3D XPoint」についてである。

 両社によれば、その特徴は以下の通りである。

(1)アクセス時間はNANDの1000倍(数十ナノ秒)
(2)書き換え可能回数もNANDの1000倍(約10の8乗回)
(3)メモリセル密度はDRAMの10倍(128ギガビット)

 また、3D XPointの構造は図1のような2階建てとなっており、ワード線とビット線が交差する部分に「セレクタ」および「メモリセル」からなる柱をつくる。セレクタに印加する電圧によりメモリセルへの書き出しと読出しを行うため、トランジスタは不要となる。その結果、メモリを小型化でき、DRAM以上の高密度化が実現できるという。

図1 「3D XPoint」のメモリアルアレイ構造
出所:Intel
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 このように特徴だけを並べると、何だか凄いメモリが突如出現したような印象を受ける。しかし、(1)のアクセス時間はDRAMと同程度であるし、(3)のメモリセル密度もNANDと同程度で、(2)の書き換え回数に至ってはDRAMよりはるかに低い。つまり、「3D XPoint」は、DRAMとNANDの中間に位置するような、何とも中途半端なメモリであるようにも思える。

 さらに両社は、メモリ動作のメカニズムやそれに用いる材料については、「・・・特殊な複合材料を開発した」としか発表しておらず、「3D XPoint」は謎に包まれたままである。それゆえ、半導体業界人の格好の噂話のネタになっているわけだ。

新型メモリ「3D XPoint」は普及するか?

 新型メモリについては、これまでも、FeRAM、PRAM、ReRAM、MRAMなど、様々なメモリが開発され、既存のSRAM、DRAM、NAND、NORを代替する計画が発表されてきた。しかし、残念ながら、一度もそれが実現したことはない。つまり、1989年にNANDが発表されて以来、新型メモリがイノベーションを起こした例はないのである。