このような脅威が量的にも質的にも増大し、それらの複合的かつ同時多発的脅威を一体的に抑止し、あるいは対処する作戦運用上の必要性が高まっている。

 そのため、米国は、IAMD構想のもと、あらゆる航空・ミサイル等の脅威に対して、攻撃作戦、積極防衛、消極防衛を指揮統制(C2)システムによって一体化させる方策を追求し、同盟国などにも同じシステムの導入を求めるようになっている。

 このように、日米両国の主権や指揮権の基本を侵さない範囲で、行動の緊密な一体化を目的として多様な作戦形態を採り得るようにし、特にBM攻撃などの事態に即応できるようにしなければならない。

 そのためには、NATOを参考に、日米ガイドラインで「各々の指揮系統を通じて行動する」と定めた「指揮」に関して実効性・柔軟性を高める方向で再定義を行うか、「調整」の範囲に「作戦指揮」から「統合指示統制権」の概念を含めるなどして、共同作戦上の相互運用性やネットワーク化を強化する工夫が必要である。

おわりに

 日米両国が、平時から緊急事態までのいかなる状況においても日本の平和と安全を確保する体制を構築することは、日本の防衛のみならず、アジア太平洋地域およびこれを越えた地域の安定および平和と繁栄に寄与する。

 この際、INF条約によって、米国の中国および北朝鮮に対する核の地域抑止が空洞化・無効化している現状に鑑みれば、日米共同によるBMDの実効性の確保は喫緊の課題である。

 一刻も早く、切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同のBM対応能力を向上させ、両国間の安全保障と防衛協力を強化することが望まれる。