つまり、日米ガイドラインにおいては、自衛隊および米軍が行う日米共同作戦は、両国の憲法などに従い、各々の指揮系統を通じて行動し、緊密な「調整」をもって協力することを基本としている。

 問題は、北朝鮮から10~15分程で日本に到達し、地上到達時の速度が秒速数キロとなる、寸秒を争う弾道ミサイルの脅威に対して、日米が各々の指揮系統を通じて行動し、「調整」をもって協力することによって、共同対処の目的を十分に達成できるかどうかである。

 日米ガイドラインは、「切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応」などを目的としているが、現行の日米共同作戦における指揮関係では、その目的を果たすことができない大きな課題が内在している、と率直に認めざるを得ないのではないだろうか。

北朝鮮が軍事パレード実施、大陸間弾道ミサイルを4基披露

北朝鮮・平壌の金日成広場で行われた軍事パレードで披露された大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」。国営の朝鮮中央通信(KCNA)が配信(資料写真、2018年2月8日撮影、9日公開)。(c)AFP/KCNA VIA KNS〔AFPBB News

いかにBMDでの日米一体化を図るか

「日米共同運用調整所」(仮称)の常設

 まず、わが国は、陸海空統合の完結したBMDシステムを独自に構築し、自衛隊の全BMD部隊を一元的に指揮統制する組織(司令部)を創設することである。

 そのうえで、日米両国は「同盟調整メカニズム」の必要性に鑑み、特にBMD共同対処を実効性あるものにするため、運用の面から両指揮機能を併置した「日米共同運用調整所」(仮称)を常設し、共同の情報収集、警戒監視および偵察(ISR)活動を継続し、弾道ミサイル発射などに即応できる一体的体制を確立することが必要である。

 その具体化のための参考となるのは、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のあり方である。

 NORADは、北アメリカの航空宇宙領域の防衛の目的で作られた米国とカナダが共同で運営する軍事組織であり、他国からの核ミサイルや戦略爆撃機による攻撃に備え、24時間体制で監視に当っている。

 また、NORADにおける米国とカナダの協力は、NATO(北大西洋条約機構)の枠組みの中での活動として位置づけられ、NATO域内における全般的な安全保障の一つの重要な要素ともなっている。

 NORADの総指揮監督は米国大統領とカナダ首相が共同で行い、司令官は米大統領およびカナダ首相によって任命される。

 司令官は、米統合参謀本部議長を経て米国政府に、カナダ国防参謀総長を経てカナダ政府に対して責任を負う。