このように、わが国も防衛省と米国防総省およびインド太平洋軍司令部(INDOPACOM)との間に常駐将校団を相互派遣するとともに、米加共同運営のNORADを参考として、第38防空砲兵旅団の日本駐留を機に「日米共同運用調整所」(仮称)を日本国内に開設し共同運営するなど、日米共同対処のためのメカニズムを常設しておくことが是非とも必要である。

日米間の指揮関係における実効性・柔軟性の確保

 日米ガイドラインでは、日米間の指揮関係について、日米が各々の指揮系統を通じて行動し、「調整」をもって協力することになっている。

 しかし、特にBMDの共同対処においては、その実効性・即応性が危ぶまれるなどの重大な問題の解決が喫緊の課題となっていることは、すでに指摘したところである。

 米国と共同して北大西洋地域(諸国)の独立と安全を確保するため、集団的防衛を目的として設立されたNATOは、その指揮関係について、下記のとおり7種類に分類し、多様な作戦形態への対応を可能にしている。

①「指揮」(Command)
②「作戦指揮」(OPCOM:Operational Command)
③「作戦統制」(OPCON:Operational Control)

④「戦術指揮」(TACOM:Tactical Command )
⑤「戦術統制」(TACON:Tactical Control)
⑥「調整権」(Coordinating Authority)
⑦「統合指示統制権」(Integrated Directing and Control Authority)

(上記項目の定義については、“NATO Glossary of Terms and Definitions”参照)

 近年、従来からの活動領域である陸海空に加え、宇宙空間やサイバー空間、電磁空間といった新たな活動領域、すなわちマルチ・ドメインの複雑多岐にわたる空間において柔軟かつ実効的に作戦を遂行することが、安全保障上の重要な課題となっている。

 そのうち、BMDに関連したものとしては、米国の統合防空ミサイル防衛(IAMD)構想がある。

 現在の経空脅威には、弾道ミサイル、巡航ミサイル、有人・無人航空機、短射程のロケット弾や野戦砲弾・迫撃砲弾による攻撃などがある。