司令官は米国人が、副司令官はカナダ人が務め、司令官は米北方軍(責任区域:米本土、アラスカ、カナダ、メキシコとその周辺海域)の司令官でもある。

 そして、この司令官と副司令官は、米コロラド州コロラドスプリングスにあるシャイアン・マウンテンスの洞窟司令部で指揮を執っている。

 この作戦センターは、米陸海空軍および海兵隊ならびにカナダ軍、合わせて200人余の専門家で構成される統合かつ共同の組織であり、その点で世界に類を見ない特色を有している。

 カナダは、米国内のNORADに約300人強の軍人を勤務させるとともに、資金および資器材を提供している。

 カナダ軍人は、例えば戦闘機の待機任務、北米警戒システム(北米大陸の北端に沿って設けられた一連のレーダ基地)の維持運用、あるいは北米における戦闘機運用を支援する前方作戦施設における勤務などのNORADの関連活動に従事している。

 カナダ政府は、このように米国との共同活動に参画することにより、同国の空域を監視・防衛するための能力と国家主権を主張する権限を確保している。

 また、両国最高レベルの国防会議である「カナダ・米国防委員会」と防衛計画の作成および軍事情報の交換に関する会議である「カナダ・米防衛協力委員会」を定期的に開催している。

 さらに、9・11の後に作られた自然災害やテロを含むカナダおよび米国の脅威に対し、共同して対処するための非常事態計画を調整する「共同計画グループ」が設置されており、密接な外交・国防に関する協議が行われている。

 このように米国はもちろんであるが、カナダにとっても、自国の防衛に関して最終決断の権限を有しつつ、それぞれの国益に最も適合する形での共同対処を可能とする枠組みが構築されている。

 一方、米国の核戦略と一体化した核戦力を保有する英国は、統合軍務使節団(Joint Services Mission)として米国防総省(ペンタゴン)へ将校団を常駐させ、平素から極めて緊密な連携を保持している。