「よし、ムダな仕事が見つかったぞ。じゃあそれをすぐ止めてしまおう」と意気込んでしまったばかりに、その仕事を担当していたスタッフには、「その仕事はムダな仕事なので止めなさい」などとついストレートに指示してしまいたくなるもの。しかし、これは厳禁です。

 指示する側は軽い気持ちで口にした言葉であっても、言われた方はそう簡単に受け入れることができない指示だからです。

 というのも、経営サイドからは「ムダ」に映るようになった仕事であっても、その仕事に携わってきた人にとっては、それなりのプライドを持ってやってきた仕事なのです。もしかしたら、その人の「仕事人生の価値そのもの」と考えている可能性さえあります。そうであれば、「その仕事は要らない=あなたの仕事人生そのものがムダで要らない」と宣告されたも同然。長年の仕事人生だけでなく人格まで否定されるくらいの衝撃です。

 あなたが指示を出したスタッフが、もしもそんなふうに受け止めてしまったらもう大変なことになってしまいます。

 自分の仕事人生を否定すれば、自分の存在価値が揺らぎます。だから、指示を出された側は、例えそれが屁理屈であっても、その仕事を「ムダ」とは認めず、無理やりにでもムダな仕事に意味を見つけだそうとします。

 無理やりその仕事を取り上げても効果はないでしょう。黙ってやり続けるか、全体の生産性につながるとは限らない、似たような仕事を自分で作り出してしまうのがオチです。

「そのムダな仕事は止めなさい」はNGワード

 せっかく見つけ出したムダな仕事をストップしてもらうには、心理的なプロセスを踏む必要があります。直球はデットボールになると相手に致命傷を与えてしまいます。ここは緩やかな変化球で様子を見ましょう。

「今まで担当していた仕事がムダだったから」ではなく、「その仕事は重要だったけど、優秀なあなたには、こちらの重要な仕事を担当してほしい」と伝えるのです。

 こんなふうに持っていけば、指示を受けたスタッフの心理的な抵抗はかなり減らせます。ただ、当の本人は現在担っている「ムダな仕事」に誇りを持っているので、スムーズに仕事を切り替えてもらうためには、もうひと工夫が必要です。

 それは、本人にとっても、チーム全体にとっても、「それをやったら生産性が上がりそう」と思える仕事を担当してもらう、ということです。その時点で、そんな仕事はチームの中に存在しないかもしれません。だったらそれを作り出していくのです。

 具体的に説明しましょう。

仕事のミッション(使命・存在意義)を再定義する

 今の仕事を止め、違う仕事を担当してもらうには、大義名分が必要です。ただし「納得感」と「それならやりたい」と思えるワクワク感がないと、大義名分がウソだと見透かされ失敗します。

 そこで最初にやらなければならないことは、現在担当している仕事の「ミッション(使命・存在意義)」を見直すことです。