アピールの弱い商品を「どう売るか」。それが今回のテーマだ。
題材は聖徳太子と小野妹子が主人公の小説『爆撃聖徳太子』(町井登志夫著)である。まずは内容を紹介しよう。
物語は西暦607年、小野妹子が倭国外交使節団代表として、当時の超大国・隋国の皇帝・煬帝に謁見する場面から始まる。辺境の小国でしかなかった倭国と比べ、圧倒的な国力を有する隋国へと派遣された小野妹子は、聖徳太子から奇妙な指示を受けていた。それは、皇帝に渡す国書にあらかじめ目を通すな、というものだった。嫌な予感がしていた小野妹子だったが、やはりその予感は当たってしまう。推古天皇の手によるものとされるその国書を実際に書いたのは聖徳太子であり、そこにはとんでもない一文が書かれていたのだ。
『日、出ずるところの天子、日、没するところの天子に書を致す。つつがなきや』
倭国と隋国を同列に並べるようなこの表現に激怒した皇帝は、小野妹子を拘束することになる。
さて時代は遡って西暦590年。小野妹子は、秦河勝が治める北九州の秦王国にいた。大陸との間で小競り合いが発生しているこの地で、小野妹子は厩戸皇子(後の聖徳太子)と出会う。その出会いは強烈だった。視線が定まらず、奇声ばかり発していた奇っ怪な男が、まさか皇族に連なる者だったとは・・・。
その出会いから、小野妹子は聖徳太子に振り回される人生を歩むことになる。聖徳太子は、未来の倭国のために、超大国・隋国相手に喧嘩をふっかけると息巻いている。そんな無謀な男の挑戦に否応なしに巻き込まれることになった小野妹子は、そのせいで生死の境を彷徨う羽目に陥ることになる。
聖徳太子は、国家を救済するヒーローなのか、あるいは気が触れているだけのただのアホなのか?