そして今度は地底湖発見
欧州宇宙機関のマーズ・エクスプレスは2003年に火星に到着し、以来、衛星軌道を周回しながら現在も観測中です。これに搭載されたMARSISは、レーダーで火星の地下を探る装置です。レーダーとは、電波を対象に浴びせ、反射してきた電波を測定することによって、対象の情報を得る装置です。
2018年7月25日、MARSISチームが、火星の地下に液体の水を発見したと発表しました(ようやくこの記事の本題です)。MARSISのデータを解析したところ、火星の南極地方で、地下からレーダー波の強い反射を見つけたというのです。そういう強い反射は液体の水面によるものと考えられます。
測定によると、この水の層は地下1.5kmにあり、大きさが20km程度、厚みが1m以下というものです。-70℃程度の低温なのに凍らないということは、塩分が濃く、飽和水溶液に近いのかもしれません。この結果は『サイエンス』誌に掲載されました。(http://science.sciencemag.org/content/361/6401/490)
前述のとおり、37億年前、地球で生命が誕生したころ、火星には海があったと考えられています。ならば火星でも同時に生命が発生してもおかしくありません。
その後、火星は大気を失い、海は干上がりました。現在の火星の大気は地球の0.75%、つまり0.01気圧以下になり、その中に水は含まれません。
しかし、37億年前の火星の海でもしも生命が発生していたならば、その後、地下に逃げ込んで大気と水の減少を生き延び、現在の地底湖で細々と暮らしているとは考えられないでしょうか。マーズ・エクスプレスの見つけた地底湖には、火星魚か火星プランクトンが泳いでいるのかもしれません。
ただし、火星の南極を探査しているのはマーズ・エクスプレスだけではありません。アメリカのマーズ・リコネッサンス・オービターに搭載されたSHARADは、やはりレーダー波を測定する装置です。SHARADのチームは、同じ区域を探査していますが、そこに水の証拠は見つかってないと答えています。地底湖の存在はまだ確定とはいえないようです。
火星はこれまで何世紀にもわたって、「生命がいそう」と思わせる発見を小出しにして、人類の気を引いてきました。その中には、間違いや単なる思い込みもあったのですが、何度空振りに終わっても、孤独な人類は火星に期待することをやめられません。人類は火星を愛しているのです。