火星の生命発見の歴史 ―火星隕石―

1996年、火星由来の隕石「ALH84001」(写真左)に、微生物が作ったような構造が発見された(写真右)。(ただし、この構造は生命とは関係ないと現在では考えられている。) Photo by NASA.
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 マーズ・オブザーバーの失敗以来ちょっと元気のない火星探査業界に、一気に活を入れるような発見が1996年にもたらされます。

 火星から来たと推定される隕石「ALH84001」を子細に調べたところ、微生物が作ったと解釈できる構造が見つかったというのです。本当なら大発見です。

 メディアは喜んでこのニュースを報じ、世界中が沸き立ちました。アメリカでは火星探査ブームが起きました。マーズ・グローバル・サーベイヤーが打ち上げられ、1997年から火星を周回して写真を撮りまくりました。一部で有名な「火星の人面岩」はこの探査機の「成果」です。

 それから現在までにアメリカは3機の探査機を火星周回軌道に乗せ、6台の着陸機を着陸させ、そのうち3台は現在も火星表面を走り回っています。欧州宇宙機関もマーズ・エクスプレスとエクソマーズを、インドはマーズ・オービター・ミッションを火星周回軌道に送り込み、いずれも運用中です。似たような名前ばかりで混乱しそうです。

 しかし残念ながら、ロシアの2回の打ち上げと、日本の「のぞみ」は失敗に終わっています。またこの間、アメリカも何機もの火星探査機を失敗させています。前述のとおり、火星探査は失敗率の高い過酷なミッションなのです。

 その後の研究によると、残念ながらALH84001に見つかった微細構造は、微生物とは関係なく、何らかの自然現象によって形成されたものと考えられています。火星の生命発見は虚報だったのです。

 しかし、この隕石に始まった火星探査ブームはすっかり定着しました。