欧州宇宙機関(ESA)が火星に送り込んだマーズ・エクスプレス探査機のイメージ図。 Image by ESA.

 こんにちは、小谷太郎です。

 みなさん、今年の火星はご覧になりましたか? 日没後に空を見上げると、ぽちっと赤く輝いて見える星が、「おとなり」の惑星、火星です。火星は2018年7月31日に地球に最接近し、そのため9月までは-2等くらいで光っています。今ならついでに木星も土星も金星も見えますよ。

 今回の最接近にタイミングを合わせて、欧州宇宙機関(ESA)が「火星に液体の水を発見」と発表しました。火星の地下に湖が存在するというのです。そう聞くと、もしかしてそこには生命がいるかも、と期待したくなります。この発見と、火星の生命の「歴史」について解説しましょう。

地球の「おとなり」火星

 私たちの太陽を周回する無数の星屑のうち、大きなもの8個を惑星と呼びます。それより小さなものは惑星と呼ばない決まりです。地球はそのうち大きな方から数えて5番目、火星は7番目の惑星です。太陽と、これら大小の星屑を合わせたものが、私たちの太陽系です。

 太陽に近い方から数えると、地球は3番目の惑星で、太陽から1億5000万kmほど離れたあたりをうろうろしています。4番惑星の火星は太陽から2億3000万kmほど離れたところをちょろちょろしています。地球と火星はうろちょろするにつれて離れたり近づいたり、時には間に太陽や水星や金星が挟まるのですが、大雑把に「おとなり」と呼んでも宇宙は広いのでかまわないでしょう。

 火星は古代から人類(のうち夜空を眺める物好きな連中)に親しまれ、それが地球と同じような一つの世界だと知られてからは、そこには生物、特に知的生物がいるのでは、と空想されてきました。(2番惑星の金星は、高温・高圧の世界だと分かってアウトになりました。)

 現在の火星の地表は、気圧が低く、液体の水は存在できません。液体の水は水蒸気圧が0.006気圧以下だと蒸発してしまい、どんな温度でも存在できないのです。

 しかし37億年以上前、火星には濃い大気があり、海や湖も存在したと考えられています。地球の生命が発生したころ、おとなりの惑星にも海があったのです。

 このような火星像が分かってきたのは比較的最近のことです。こういう理解が得られるまで、火星のイメージはどのようなものだったか、ちょっと振り返って見ましょう。