エピローグ/日本の対応策は

 ここで冒頭に戻ります。旧ソ連邦の時代、西シベリアから欧州向けの石油・ガスパイプラインは存在しましたが、東方へのパイプラインは存在せず、ロシア産石油と天然ガスは(トルコを含む)東欧・西欧のみに輸出されていました。

 しかし1991年末の旧ソ連邦解体後の新生ロシア連邦では、東シベリア・極東から東方向けの原油・天然ガスパイプライン建設構想が浮上し、ESPO原油パイプラインが建設されました。

 さらに西シベリアからESPOへの接続パイプラインも建設され、今では西シベリア産原油が5000キロ以上のパイプラインで東方に輸送され、ロシア極東コズミノ出荷基地から環太平洋諸国に輸出されるようになりました。

 西シベリアでは、旧ソ連邦時代に探鉱・開発された大規模原油・天然ガス鉱区の生産量が減少しており、西シベリアを生産拠点とする石油会社やガスプロムの生産量が減少。

 かつ、ガスプロムにとり金城湯池の欧州ガス市場では、他の天然ガス供給国やLNGとの競争が激化しています。

 これが、東シベリア・極東開発の必要性と、新規市場として日本を含む環アジア太平洋諸国市場の重要性が増しているゆえんです。

 もう一つの要素は中国です。

 露は中国のロシア極東進出を警戒しています。一見、蜜月関係を標榜する露・中両国ではありますが、プーチン大統領の東シベリア・極東開発構想の真意・背景は隣国警戒感にほかならないと言えましょう。

 ロシア極東の天然ガスが中国と韓国に流れるインフラが整備されると、日本のガス化学産業にも影響が出てくること必至ゆえ、日本も、韓国から対馬海峡経由九州(あるいは島根や鳥取など)向け天然ガスP/L延伸構想の可能性を真剣に検討する必要があると筆者は考えます。

 先にも述べました通り、日本の原油中東依存度は90%、ホルムズ海峡依存度は85%、LNG依存度は100%です

 東方に向かうロシア発展のベクトルのその先には、日本や韓国を中心とする環太平洋諸国市場が視野に入っているはずです。

 経済性成立が大前提ではありますが、供給源と供給方法と輸送路の多様化こそ、日本の国益に適ったエネルギー政策と筆者は確信している次第です。