条件に合った中国国内の金融機関と企業に国外で発行された人民元と外国の債権を沿線国家において計画資金として使用することを鼓舞するとしている。

 他方では、金融監督面での協力体制を強化し、国内外でのリスクと危機に対する対処態勢を強化することも謳っている(同上書、200-201頁)。

 このような仕組みづくりが効を奏したのか、資金は集まっていると誇示する記述もある。

 2016年の中国の外資吸引の規模は世界第3位、新興国間では第1位となり、外国企業の投資比率はますます増加し、高付加価値のサービス業、先端部門の製造業などの外資投資が引き続き増加している。

 その結果、2017年3月現在の、中国の外貨準備高は3.01兆ドル、世界第1位となり、世界の外貨貯蓄の約30%を占めている。

 中国の外貨貯蓄の変動要因として、為替変動、シルクロード設立基金への出資、人民銀行による市場操作などがあるが、中国は、自国通貨を安値にして競争力を高めることはせず、通貨の流動性はコントロールし、人民元が暴落して他の通貨に対し負の調整を強いるようなことはしないと明言している。

(林毅夫『”一帯一路”2.0 中国が指導するシルクロードの新たな構造』浙江大学出版社、2018年、164-165頁)

 しかしこのような当局の表向きの発表が実態を表しているかには、疑問がある。後述するように、中国経済は、数々の困難に突き当たっている面もある。