さらに深刻な問題として、人口の高齢化が挙げられている。労働人口が減少し、中間所得層が増加しているが、供給システムがそれに追いつけず、その結果、一面では過剰が、他面では不足が生じている。

 2つ目の構造的不均衡が、金融と実体経済の間で生じている。

 利潤を得る能力が低下しているなか、構造的な需給の不均衡という矛盾が生じている。

 そこで、需要の不足に対応するため通貨を増発し需要を拡大しようとしているが、逆効果になり、増加した通貨は実体経済に回らず、金融システム内で循環し、大量の余剰資金が投機に向かっている。

 2014年の株式市場の乱高下にもこのような背景があり、金融業の比重は上がっているが、製造業の比重は下がっていると指摘している。

 ここには、バブル経済に対する危機感が表れている。

 3つ目は、不動産業と実体経済の不均衡である。

 投機の機会を失った余剰資金が大量に不動産業に向かい、不動産の高騰を招いている。資金は不動産業に集まり、インフレが進み、実体経済のコスト高を招いているとし、不動産バブルの弊害に警鐘を鳴らしている。

 これらの不均衡解消策として単純な需要拡大策を取れば、かえってコスト高を招くことになる、供給側における新たな構造改革により、需要の伴わない供給をなくし、新たな需要に適応した有効な供給を生み出し、供給面での新たな動態的均衡の実現に努力しなればならないと強調している(同上書、94頁)。

 この指摘は、経済原理に沿った的確なものと言えよう。

 半面、一帯一路という発展戦略は、中国の国内経済が供給過剰に陥っており、そのはけ口として中央アジアなど、成長しているがまだ高度な経済段階に達しておらず、中国製品の輸出拡大が見込める地域への市場拡大を狙うという思惑があることを示唆している。