3 党中央の重要施策・一帯一路構想の位置づけと目的

 これらの紆余曲折を経つつも、一帯一路構想は、2017年の党大会で、党中央の重点政策として明確に位置づけられた。

 2017年10月の中国共産党第19回全国代表大会における習近平総書記の報告内容が公表されている(本書編纂委員会編著『党の第19回大会報告補導読本』人民出版社、2017年)。

 その中で習近平総書記は、全方位外交の展開の「我が国の発展にとり良好な外部条件を造り上げるため」の具体策として、「共に”一帯一路”を建設することを呼びかけ、アジアインフラ投資銀行を創設し、シルクロード基金を設立して、最高度の第1回”一帯一路”国際協力フォーラムを開催」することなどを提唱している。

 さらに、それによって「人類運命共同体の建設を唱道し、グローバルな統治システムを変革」し中国の「影響力、感化力、形成力をさらに高め、世界の平和と発展に重大な貢献をする」と表明している。

 この発言は多分に政治的なものではあるが、一帯一路の目的は、中国の発展にとり好都合な外部環境を作為し、引いては世界の統治システムを変革することにあるのを明らかにしている(同上書、7頁)。

 また同大会の習総書記の別の版の報告文書である『中国共産党第19回全国代表大会文書総集編』(人民出版社、2017年)では、「対外開放という基本的国策を堅持し、 国境を開放して建設を進めるとの政策を堅持し、”一帯一路”の国際協力を積極的に促進し、政策を行き渡らせ、機構を連携させ、貿易を増加させ、資金を融通させ、民心を交流させ、新たな水準の国際協力を生み出し、共同発展に新たな原動力を増強することの実現に努力しよう」と呼びかけている(同上書、48頁)。

 この発言からは、一帯一路は対外開放方針に基づく政策であり、外国との関係を緊密にし、貿易を拡大し、資金を呼び込み、共に発展することを目的としていることが窺われる。

 同大会の決議では、対外政策の方針として、平和的発展と共栄の原則を堅持しつつ、一帯一路を促進すると表明されている。

 この外交方針は、強軍建設と両岸政策における”平和統一、一国二制度”方針に次いで決議されている(同上書、106頁)。

 前述した一帯一路構想の中でも、「台湾の一帯一路への参加を生み出すように適切に配慮する」との文言があったが、一帯一路構想の中に、当初から、台湾の平和統一という目的があることは注目される。