例えば、対外貿易額は1978年の200万ドルから2012年の3.8億ドルに急増し、その間の年平均伸び率は16.6%に達している。
貿易依存度についても、1978年の8.98%から2012年には46.8%に達し、中国経済の発展の約50%が対外貿易の影響を受けるようになっている(同上書、237頁)。
海上ルート上の海峡についての分析結果として、特にマラッカ海峡の重要性が指摘されている。
マラッカ海峡は、太平洋とインド洋を結ぶ最短の海上ルートであり、いったん遮断されたり、大型船舶の通行が困難になれば、代替の海峡を選ばねばならなくなる。その選択肢としては、スンダ海峡とロンボク海峡があるが、これらの海峡通航の安全も高めねばならなくなる。
しかし、両海峡の通行量はマラッカ海峡の1日約80隻に比べ、いずれも約10隻と少なく、通航を確保できる見通しは比較的に少なく、安全通航に脅威もある点に注意が必要であると評価している。
また中国の原油の輸送路がマラッカ海峡から西に向かって走っている。ビルマから雲南に陸上のパイプラインを通すのも、マラッカ海峡を迂回する案として考えられるとしている(同上書、262-263頁)。
パキスタン回廊も同様だが、雲南~ビルマ(ミャンマー)ルートも、原油のインド洋からマラッカ海峡~南シナ海に至る海上輸送路の代替輸送路としての価値から開発の重点となったものである。
その意味では陸路の一帯は、安全保障上はもともと、海上の一路の代替ルートとしての性格を持つ、補完的手段としての位置づけであったと言えよう。
中国の海上安全保障に関する分析文献によれば、5本の海上輸送路が想定されている。
(1)南シナ海~マラッカ海峡~インド洋~ペルシヤ湾・中東又は欧州に至る欧州ルート
(2)南シナ海~インド洋~喜望峰~大西洋~米国東海岸に至る米・アフリカルート
(3)大隅海峡~ハワイ~南米西岸又はパナマ運河・米東岸に至る米・東ルート
(4)対馬海峡・日本海・アラスカ又は大隅海峡・ハワイ~米西岸に至る米・西ルート
(5)台湾海峡~南シナ海~ロンボク海峡又はモルッカ諸島~豪州に至る豪州ルート
また、マラッカ海峡、スエズ運河など世界の主要海峡の安全保障上の価値、原油・天然ガス、コンテナ、鉱石、食料、石炭などのエネルギー資源の物流交易量からみた安全保障上の価値についても分析評価している。