評価指標としては、ルートの距離、港湾の能力と数、戦略的価値など基礎的要因、および気象、通航環境からなる内部環境、政治・軍事・法律、政策・海賊とテロ・安全保障能力などの外部環境要因の両面から分析評価している(同上書、249頁)。

 その結果得られた総合評価では、南シナ海~マラッカ海峡~インド洋を経る欧州ルートと米・アフリカルートが内外要因ともリスクが高く、米・東ルートは内部的には安全だが外部リスク要因は高いとなっている(同上書、307頁)。

 欧州ルートも米・アフリカルートもともに、南シナ海での海賊と軍事衝突のリスクが高く、中東の政治的不安定とアフリカ周辺海域での海賊のリスクが高いとみられている。

 物流交易面では、コンテナと原油・天然ガスの交易ルートのリスクが最も高いと評価されている。

 中国のコンテナは世界的に交易されているが、特に欧州ルートと米・西ルートが多く、インド洋、アフリカでの海賊、テロ、パナマ運河の通峡阻止、カリブ海の政治的不安定、気象などの影響で、リスクが高くなっている。

 原油と天然ガスについては、中東、中南米、アフリカを通過する欧州、米・西、米・東ルートにより交易されており、いずれも、政治的に不安定でテロ・海賊などのリスクが高い。

 原油の輸入先が偏り、代替の地区や輸入ルートが欠けていることがリスクを高めていると分析している(同上書、312-319頁)。

 このような客観的な分析評価結果から見ても、南シナ海とマラッカ海峡の重要性は明らかである。

 5本のルートの内、最もリスクの高いルートがこの2カ所を通過しており、かつ原油の最重要輸入路でもある。コンテナの交易ルートとしても重要である。

 また、この分析結果からも、南シナ海~マラッカ海峡~インド洋ルートの代替ルートの必要性が明らかとなっている。