武力による威嚇と、貿易・投資・組織と人の交流拡大による依存関係の深化を並進させ、台湾をできうれば平和裏に統一しようとする、大陸側の意図がうかがわれる。

 この台湾統一の下工作という目的が、一帯一路構想には当初から秘められていることには、日本としても警戒を要する。

 なお、党規約の内容に「共に交易し共に建設し共に成果を享受するとの原則に従い、一帯一路建設を推進すること」を含めることに、同大会は承認を与えている。

 この承認項目は、「習近平の強軍思想の貫徹」などと並列された、最も重い党規約改正内容の一つである。このことからも、習近平政権にとって一帯一路構想がいかに重要かが窺われる。

4 貿易、資源エネルギーの輸送路としてのマラッカ海峡と南シナ海の戦略的重要性

 21世紀の海上シルクロード、一路の必要性について、中国の海上安全保障の専門家は、以下のように分析している。

 中国は新たな世界的な貿易路と連接しており、新貿易路の革新的な価値は、戦略的安全に通じるものであり、海上交通路は線から面に発展している。

 これらの交易路は、ASEAN(東南アジア諸国連合)、南アジア、西アジア、北部アフリカ、欧州に連なり、巨大な一塊の市場を形成している。

 南シナ海から太平洋、インド洋に向かって戦略的国際協力地帯を発展させ、欧州・アフリカの経済・貿易と一体化させることが、長期的発展戦略の目標である。

 21世紀のシルクロードの建設は、中国がこの第2の経済体の先導役となり、沿線の国家と地区の原材料、戦略資源、投資、文化などを包含する、全方位の協力と共同建設を進めることを可能にしようとしている。

 しかし、この海のシルクロードは、中国の戦略的エネルギー資源の海上交通路を含み、領海をめぐる紛争原因、戦略的海峡、政治的に不安定な地域、海賊多発地帯などの多くの不安全要素も抱えている。

 したがって、海上のシルクロードの経済と貿易の発展と海上運輸の増加に伴い、海上の脅威に対する安全確保も並行的に進めなければならない(呂婿等著『我が国海上ルートの安全保障研究』経済科学出版社、2017年、231-232頁)。

 ここには、一路の狙いが、中国にとり死活的な戦略物資の輸入路、経済発展にとり重要な貿易路の安全及び沿岸諸国への海外市場の拡大にあること、そのためには海上の安全確保が不可欠なことを述べている。