長尾 日本人の平均寿命は女性が87歳、男性は80歳と7歳短命です。大企業のトップは多くが男性、医学部の教授も男性が多い。近年、日本では「男女平等社会」の実現に向けて、女性に対して社会的にも手厚く優遇される方向に向かっていますが、男性のほうが実は虚弱で早死にしやすいのです。これは世界各国共通で、WHO(世界保健機関)2013年のデータでも、男性が長生きなのは加盟国194カ国中トンガ王国だけでした*4

*4:2015年のデータでは、トンガも女性の平均寿命が男性のそれを上回った。

 ――男性は長生きできない?

長尾 厚労省が発表した2017年の高齢者調査では、「百寿者」と呼ばれる100歳以上の人が国内に6万7824人でした。20年間で約8倍にも増えています。現在も増え続けています。とはいっても、男性はそのうちの8197人、9割方が女性です。100歳を超えて「老衰」で長寿を全うする男性は少数です。

 90歳まで生きると、通常は6割の人が認知症を伴いますが、男性の場合、認知症に至る前にがん、心筋梗塞、脳卒中でお亡くなりになる方が多いのです。奥さんが認知症になって夫が介護していたら、あるとき夫ががんや心筋梗塞で先に逝ってしまったということもよくあるケースです。

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 生活習慣病とは、暴飲暴食、喫煙、肥満、運動不足、睡眠不足、ストレスが原因で血圧が上がり、糖尿病になり、脂質異常症になり、さらに悪化してがん、脳卒中、心筋梗塞といった重篤な病気で死に至る。男性女性に限らず、突然死をいかに回避するか、健康に長く生きられるかどうかは、生活習慣病のリスクを少しでも下げるような生活を送ることにかかっているのは言うまでもない。

(つづく)

長尾和宏医師プロフィール

1958年6月生まれ。香川県出身。医療法人社団裕和会理事長、長尾クリニック院長。1984年東京医科大学卒業後、大阪大学第二内科に入局。1986年より大阪大学病院第二内科、市立芦屋病院内科勤務を経て平成7年に、尼崎市に長尾クリニッックを開業し、外来と在宅医療を両立させる。「町全体が私の病棟、自宅は世界最高の特別室」をモットーに、「町医者」として、病院で1000人、在宅で1000人を超える患者を看取ってきた在宅医療のオピニオンリーダー的存在。さらに、日本尊厳死協会副理事という立場から、高齢者の健康、終末期医療、尊厳死・平穏死について啓発活動に取り組み、提言を行っている。毎日ブログを発行する傍ら、複数のメディアで連載を担当、『平穏死10の条件』『抗がん剤10のやめどき』『薬のやめどき』『痛くない死に方』『親の「老い」を受け入れる』など、ベストセラーとなる書籍も多数ある。