孤独死には明確な定義がないため、特定の地域内の部分的な統計しかありませんが、東京23区だけでも2016年には、4604人が発見が遅れた孤独死となっています。その約7割が男性で、約7割が65歳以上の高齢者ですが、40代、50代でもみられます。

 全国の自殺者数約2万人の中に孤独死はカウントされませんが、病気の治療を受けない、食事をきちんととらない、酒浸りになって薬を服用するなど、限りなく自死に近い「緩やかな自殺行為」といえるケースも少なからずあると思われます。ざっくり見積もっても、20人に1人は孤独死という、極めて身近に起きていることなのです。

長尾和宏著『男の孤独死』(ブックマン社)

 ――警察沙汰にならないためにどうすれば?

長尾 人はいずれ死ぬことは避けられません。死ぬときは必ず一人なので、一人で死ぬこと自体は自然な流れです。

 孤独死として問題になるのは、警察が介入せざるを得ない状況に至ることです。家族やかかりつけ医が不在で、死因が病死だとすぐに判断されない場合、「穏やかな死」どころか「事件」の疑いがかけられ、警察によって犯罪性があるかどうかの調査である「検視」が行われます。その後、必要に応じて司法解剖が行われ、遺体が切り刻まれることになります。

 それだけでなく、発見が遅れ、遺体が傷んだ状態で発見されると、誰が行うにしても、片づける人にとっては過酷な作業です。発見された部屋の家主や近隣の住民にも迷惑がかかります。

 多死社会を迎え、2040年には160万~170万人の人が亡くなると推測されています。現在、日本で発見された遺体のうち解剖(司法解剖または行政解剖)されるのは1割程度ですが、亡くなる人が増えれば、当然、検視の数も増え続けます。

 今でさえ、警察の遺体安置所は処理しきれない遺体であふれかえっていますので、この状態が続くと、警察も警察医も監察医も手が回らなくなることは目に見えています。不要な警察の介入はできる限り減らすためには、死後、かかりつけ医が異常死でないことを確認し、死亡診断書を書けば、警察の事情徴収や現場検証を行わなくても済むのです。

 自宅に一人でいて倒れたとしても、地域で在宅医療などの定期的な見守りを受けていれば、発見も早く、処置が早ければ命を救うことも可能なのです。