舩木良真医師による訪問診療の現場(写真提供:医療法人三つ葉)

 日本の高齢化率は27.4%(2017年)に達し、「超高齢社会」が進展する中、国の方針により要介護者の在宅率は上昇し続けている。しかるに、全国各地では経営難に起因する病院の統廃合が加速化し、在宅要介護者やその家族のニーズの増大に逆行するかのように、十分な医療サービスが提供されにくい状況になってきている。

 大都市部においても状況は芳しくない。夜間や休日に主治医の診療を受けることは困難であり、救急車を呼んでも、たらい回しにされた挙句、患者の医療情報をもたない病院の当直医におざなりの対応をされることも多い。

 医療サービスの質も量も問われるこうした現代日本において、全国的な注目を集めるクリニックがある。名古屋市にある「三つ葉在宅クリニック」(医療法人三つ葉)である。その代表は舩木良真医師(39)。

 常勤医師8人、非常勤10人。他に医療ソーシャルワーカー、診療サポート、医療事務、ドライバー、システムエンジニア、総務などスタッフ62人。

 名古屋市内の8区をカバーし、患者数は約1000人に達する。患者の年代は、80代が最多で、70代、90代と続く。病状に合わせた定期的な往診に加え、夜間・休日を含めた彼らへの緊急往診は年間2000件を超える。

きっかけは“地域医療の機能不全”

「名古屋大学医学部在学中は研究医になるつもりでした」と語る舩木氏。しかし、研修医1年目、日本の医療の在り方に深刻な疑問を感じたという。