会社に出勤しても健康上の問題でパフォーマンスが上がらない社員は少なくない(写真はイメージ)

 近年、様々なメディアで「健康経営」というキーワードをよく目にするようになった。もはや健康経営と聞いて目新しい印象を受ける人はもう少ないだろう。既に多くの企業が健康経営に関する何らかの施策を実践しており、企業経営のトレンドの1つとなっている。

 このような動きに伴い、企業の健康経営を支援するビジネスの需要も大きくなっている。ヘルスケア事業に関心のある企業にとって、この機会をどのように捕らえていけばいいのかは大きなテーマである。

「健康経営銘柄」創設の大きな影響

 健康経営という概念の歴史は古く、1980年代には米国の経営学者ロバート・ローゼン氏によって「ヘルシーカンパニー」という概念が提唱されている。ヘルシーカンパニーとは、従業員が企業に不可欠な資本であることを認識し、健康投資を促す仕組みづくりを企業が行うことで従業員の生産性を高め、自社の収益向上を図るという経営のあり方を意味する。これは現在の健康経営のあり方とほぼ同義である。

 国内においても、以前から健康経営の概念は提唱されていたが、現在のように多くの企業で取り組みが活発化するに至ったのは、2015年に創設された「健康経営銘柄」の選定制度の影響が大きいと筆者は考えている。健康経営を行うメリットの1つとして、企業イメージの向上による信用獲得や人材確保が挙げられるが、いずれも評価指標が曖昧であり、経営者が強いインセティブを持つことが難しかった。しかし、健康経営銘柄の創設によって、健康経営銘柄に選定される形で企業イメージ向上の明確な成果を出せるようになった。

 健康経営銘柄は原則1業種1社しか認定されないことになっており、認定企業は同業他社間において健康経営のリーディングカンパニーであることを公的に認知され、高い企業ブランドを勝ち得ることになる。実際、厚生労働省のコラボヘルスガイドラインによると、健康経営銘柄に選定されるもしくは選定過程で高く評価された企業では、TOPIXに比べて高い株価推移を示している(図1)。

図1 健康経営に取り組む企業と株価の関係
出所:2017年7月 厚生労働省保険局「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」(以下、同)
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