――60代独身男性が「突然死予備軍」トップの理由は?

東京都区部における性・年齢階級別の孤独死数(2016年)。東京都監察医務院のデータをもとに作成。

長尾 孤独死で一番注意が必要なのは、60代男性の「突然死」です。上のグラフでも分かるように、65~69歳で一気に死亡数が上昇しています。これは、会社に勤務しているときは会社の健診である程度の健康状態がチェックできますし、70歳になると介護保険で自治体の健康診断でチェックされる機会があります。

 けれども、60~70歳は退職後、外出する機会が減り、一人で家にいることが多くなります。人によっては運動不足や食生活の乱れから、現役時代に患っていた生活習慣病が一気に悪化することが往々にして起こります。

 特に突然死を起こしやすい病気としては、急性心筋梗塞や大動脈解離です。さらに奥さんに先立たれた場合や離婚などで、残された男性の場合、一人の生活で孤独に陥ることが強いストレスとなり、突然死のリスクが一気に高まるのです。

 京都大学健康科学センター長の川村孝教授が、1989年から7年間にわたって突然死した264人を調査し、突然死のリスクを年代・性別ごとに公表しています*3。この調査結果を分析すると、4月の深夜帯、お花見で酔っぱらった夜の中高年男性が最も危険というところでしょうか。

突然死のリスク*3

・女性より男性のほうが3.8倍多く起こる。
・男性では加齢とともに増加(女性はケースが少なく比較できない)
・月別にみると4月が多い(平均的な月に比べて1.62倍)。
・平日に比べて日曜日は1.9倍、土曜日が1.36倍と、週末に起こるケースが多い。
・深夜から未明にかけて起こることが多く、午前0時から3時は、午前9時から12時の1.71倍の確率。
・死因は、心臓血管疾患が半数以上。心不全が100件、急性心筋梗塞が43件。くも膜下出血が41件、脳出血が25件。
・勤務中に突然死する確率は2割弱、勤務外が8割強。勤務外の内訳は、睡眠中が20%、休息中が15%、入浴中が5%、用便中が5%。
 

*3Kawamura T, et al. Sudden death in the working population: a collaborative study in central Japan. Eur Heart J 1999; 20: 338-343.