「みちびき」は、アメリカのGPSと同じ形式の測位信号を送信する。受信側はGPS衛星の信号と「みちびき」の信号を組み合わせることで測位する。GPSは高度2万kmを巡る衛星24機から測位信号を送信しており、地上からはGPS衛星が空をゆっくりと移動しているように見える。このように日本の上空を移動し続けている衛星から届く信号と、常に日本の真上に見える「みちびき」の信号を合わせることで、日本近辺における正確な測位が可能になる。
しかし、「みちびき」だけで測位できる日も、それほど遠くはない。2023年度にさらに3機の衛星の打ち上げが予定されており、最終的に7機体制での運用になるからである。合計7機になると「みちびき」が送信する測位信号だけで、日本近辺における正確な測位が可能になる見通しだ。
測位誤差が極めて小さく、高精度の測位を実現できる。この3つ目の特徴は、「みちびき」がとりわけ期待される大きな理由の一つになっている。高精度測位の秘密は、GPS互換の測位信号とは別に「みちびき」が送信する補強信号にある。
現在のGPSは最大10m程度の測位の誤差がある。誤差が発生する原因は、電離層を測位信号の電波が通過する際の電波の速度変化や、地表から見える衛星の配置が悪い(適度に離れて見えないと測位誤差は大きくなる)などさまざまだ。
「みちびき」は、これらGPSの誤差を補正して精度を上げるため、2種類の補強信号を送信している。この補強信号を利用すると、誤差が1m以下、最小でcm単位の測位が可能になる。ただし、これらの測位には補強信号対応の受信機が必要となる。
わずかcm単位の測位誤差。この利点を生かすべく、国内では「みちびき」の応用に向けて様々な実証試験が始まってる。特に期待が大きいのは、農業機械や土木機械の自動運転、測量、大型建造物の建築などである。最大10m程度も測位誤差が生じるようだと、安全で正確な自動運転が難しく、農作業や造成作業などの省力化や効率化はとても成し得ない。しかし、測位誤差をcm単位に抑えられれば、一気に自動運転の実用化は現実味を帯びてくる。
高精度測位サービスの活用で主役になるチャンスも
最後に「みちびき」の課題についても確認しておこう。測位衛星システムは社会インフラであり、衛星を打ち上げてシステムが動き出したら、それで終わりという性質のものではない。課題と向き合いながら、誰もが便利に使える環境を模索し整えることで初めて役に立つものとなる。