
2025年4月13日、「ミスターWeb2.0」と呼ばれたリボルバー創業者、小川浩さんが永眠されました。
(編集部注:リボルバーはIT関連の出版のほか、コンテンツ配信ネットワークやウエブへのコンテンツ投入を行うCMSなどを提供している)
ウエブメディアの変革期において、その最前線を常に走り続け、情報発信と人間を繋ぐ新たな地平を開いた彼の生涯を、友人としてここに記します。
時代を拓いた「Web2.0」の旗手
小川浩さんという人物を語る上で欠かせない言葉、それが「Web2.0」です。
インターネットの黎明期を過ぎ、単にウエブサイトを閲覧するだけの「Web1.0」時代から、「ユーザーが自らコンテンツを作り出す時代」へと舵が切られた2000年代。
その先頭を走り続けたのが小川さんでした。
彼が作ったブログプラットフォームやソーシャルメディアは、日本のウエブ文化に計り知れない影響を与えました。
情報の送り手と受け手という境界線がなくなり、誰もが発信者になれる可能性を示したのです。
彼が常々口にしていた「情報は民主化されるべきだ」という信念は、まさにWeb2.0の理念そのものでした。
小川さんが推進した技術やアイデアは、のちのソーシャルネットワークやコミュニティの形成に直結しており、現在私たちが享受するネット文化の礎となっています。
小川浩さんとの出会い
私が小川さんと初めて出会ったのは、サンフランシスコで開催されたWeb2.0のイベントでした。
5日間、同じ会場にいましたが、恐れ多くて声を掛けることすらできませんでした。
後に、このイベントの様子をまとめた『Web2.0Book』は大ベストセラーとなり、テクノロジー系書籍として今もその記録は塗り替えられていません。
実は最初、小川さんに対してはメディアでの華やかな取り上げられ方から、「鼻持ちならないヤツだ」と感じていました。
しかし、それは私の嫉妬だったと気づき、逆に自分から彼に近づいたのです。
それ以来、公私ともに深い交流を重ね、いつしか親友と呼べる間柄になっていました。
当時、私は携帯電話用のRSSリーダーを開発しており、小川さんとはRSSの未来について何度も熱く語り合いました。
その後も、サンディエゴやシリコンバレーを一緒に訪れ、ウエブ技術の最前線を体感しながら過ごした日々は、私にとってかけがえのない思い出です。
彼はいつも情熱的に次の時代を予測し、自分たちでその時代を創り出そうとしていました。
その姿勢は一貫していて、彼の話す未来は常に数年先の現実になっているのです。
「ウエブの主役はあくまでユーザーだ」
彼は口癖のようにそう語りました。
私も含め、彼の周囲には、そんな彼の思想に共感する多くの仲間たちが集まっていたのです。