以下、一つずつ詳しく見ていこう。まずは、準天頂軌道についてだ。
一般に赤道上空3万6000kmを巡る衛星は、24時間で地球を一周する。そのため、同じく24時間で1回転する地球の地表からは、空の一点に衛星が静止しているように見える。これを静止軌道といい、通信衛星や放送衛星、気象衛星などが利用している。
一方、「みちびき」の初号機、2号機、4号機は、準天頂軌道という特別な軌道で運用されている(3号機は静止軌道)。赤道に対して40度ほど傾けてさらに楕円にした軌道だ。24時間で地球を一周することは静止軌道と同じだが、軌道そのものが赤道に対して斜めに傾く楕円形なので、地表から見ると空に1日1回、8の字を描くように移動しているように見える。
さて、ここからが「みちびき」がとる準天頂軌道の重要なポイントである。
「みちびき」の楕円軌道は、北半球側を高度4万kmまで持ち上げ、南半球側を3万2000kmまで下げている。そして「みちびき」が描く8の字の頂点が日本から見てほぼ真上、すなわち日本のほぼ天頂に位置するようになっている。
地球を回る衛星は、地球からの距離が遠ざかるほど地表から見た動きが遅くなる特性がある。そのため「みちびき」は北半球の日本の天頂付近で地球から最も遠ざかり、衛星の動きが遅くなる。
実際のところ、8の字の準天頂軌道に入った「みちびき」衛星は、日本の真上、正確には地平線から測った角度が80度以上のほぼ真上に1日8時間とどまることになる。つまり準天頂軌道に衛星を3機打ち上げて、順番に8時間ずつ日本の真上を通過するようにすると、日本の真上にはいつも1機の「みちびき」衛星が見えることになる。
補強信号を使い測位誤差をcm単位に縮小
日本の真上に「みちびき」が常に見えるメリットは想像に難くないだろう。衛星からの測位信号の電波が、建物や地形によって遮られることがなくなるため、いつでも安定した測位が可能になるのだ。
ただし、「みちびき」は衛星1機が送出する測位信号だけでは、測位できない。ここで前述した2つ目の特徴が生きてくる。