SOMPOコミュニケーションズ社長 林祥晃氏(撮影:冨田望)
「やっちゃだめ」という同調圧力が強い組織を、どうすればメンバーに挑戦を促す「やっていい」組織に変えられるのか。「そのためには経営層やリーダーとメンバーとの間の不信感を信頼感に変える必要がある」――。こう訴えるのは、2025年8月に著書『よい同調圧力を組織の武器にする』を出版したSOMPOコミュニケーションズ社長の林祥晃氏だ。「やっていい」という“よい同調圧力”の広がりを阻む壁とは?リーダーとメンバーの間の信頼関係はどうすれば築けるのか?林氏に話を聞いた。
「よい同調圧力」を阻む3つの壁
──著書『よい同調圧力を組織の武器にする』では、挑戦や新たな取り組みを促すための「よい同調圧力」を組織内に浸透させることが重要、と述べています。具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。
林祥晃氏(以下敬称略) 同調圧力というと、“やっちゃだめ”という言葉で従業員の主体性の発揮を阻害したり、ハラスメントやストレスの原因になったりするイメージが強いのではないでしょうか。
同調圧力の存在は組織の中に根付いたものなので、一朝一夕に変えられるものではありません。そうであるならば、それをうまく利用して、自発的な行動を促す“やっていい”というよい同調圧力を広めるべき、ということが私の考えです。
その実現のためには「3つの壁」があります。1つ目の壁は、会社の方針が二転三転することで生まれる「組織への不信感」です。上に立つ人の言うことが事あるごとに二転三転していると、従業員がどれだけ「やっていいよ」と言われても簡単には信じられず、ひとごととして受け取るようになります。
2つ目の壁は、従来型のマネジメントの仕組みが性悪説に根ざしていることです。従業員を組織の方針に従わせようと必要以上に戒めに力を入れるようであれば、社員は安心してチャレンジできません。
3つ目の壁は、組織が元来「仮面をつける場所」であることです。私の愛読書である『ティール組織』(フレデリック・ラルー著、英知出版)には、「歴史を振り返ると、組織とは常に、ほとんど文字通りの意味でも比喩的な意味でも、人々が『仮面』をつける場所だった。(中略)従業員の側は、ありのままの姿をさらけ出して職場に現れると、非難されるか馬鹿にされるか、奇妙で場違いな人だとの印象を周りに与えかねないことを恐れている。そこで、仕事用の仮面の後ろに自らを隠しておく方がはるかに安全だと考える」とあります。この言葉は、組織にはそもそも“やっていい”という土壌が整っていないことを示唆しています。







