三菱電機 上席執行役員 ビジネスイノベーション本部長 松原 公実氏(撮影:宮崎訓幸、以下同)
三菱電機は、リスクを恐れず新たな発想で価値を創出する「イノベーティブカンパニー」への変革を掲げている。同社で新規事業創出を担うビジネスイノベーション本部(BI本)に対する社内外からの期待が、今急速に高まりつつある。2020年に設置されたBI本は、かつて「自前主義」によって他の事業本部との関係が希薄になった時期もあったという。そんな同本部が、いかにして事業本部とともに新事業創出を目指すようになったのか。2025年に同本部長に就任した上席執行役員の松原公実氏に、変革の最前線について聞いた。
社会に大きな影響を与えるような仕事に関わりたい
――松原さんは、2022年まで統合デザイン研究所の所長を務めていました。デザインの経験がどのように今の役割につながっていったのでしょうか。
松原公実氏(以下、敬称略) 東京藝術大学でプロダクトデザインを専攻していた私は、社会に大きな影響を与える製品づくりに携わりたいと考え、幅広い事業領域を持つ三菱電機を志望しました。子供の頃から宇宙が大好きで、ファッション誌より先に科学雑誌『Newton(ニュートン)』を買いに行くような小学生でした。そうした原点もあり、就職先の1社として、宇宙関連事業を手がける三菱電機に自然と関心を持つようになったのです。
入社後は、洗濯機や冷蔵庫、テレビといった家電製品のデザインからキャリアをスタートさせました。その後、マーケティング調査やBtoB(企業向け)領域の提案活動にも携わり、ユーザー起点で課題を捉え、価値を設計する経験を積みました。当時のメンバーのこうした一連の取り組みが、現在のサービスデザインやソリューションデザインにつながっています。
当社の統合デザイン研究所は、製品の見た目や使い勝手だけでなく商品やサービスの企画も含む「広義のデザイン」を実践しており、取引先からの受注活動にもデザイナーが参加する文化があります。ものづくりの上流から価値を考える姿勢が根付いており、この経験が現在のビジネスイノベーション本部(BI本)の役割にも直結しています。






