1橋ずつ目視で確認
と、インスペクション・カーが徐々にスピードを落とし、停車した。金属音とエンジン音がすうっと消え、辺りが静寂に包まれるのと同時に、和やかだった荷台の上に瞬時に緊張感が走る。
「よし、やるか」という小さな掛け声とともにきびきびと立ち上がった一行が次々と線路に降りて歩き出し、水路に架かる小さな橋梁を渡り始めた。
置いていかれまいと後を追うと、水路の向こう側でパシフィックコンサルタンツ(株)の志田悠歩さんがカメラを構え、真剣にシャッターを切っていた。
もともと国内事業部に配属されていたものの、自ら手を挙げ1年の予定で国際プロジェクト部に出向している青年だ。そんな志田さんに「こっち側からも撮って」と指示を出していた同社の浅尾尚之さんが、地面に視線を落として「うーん」とうなった。
さほど大きくはないものの、それなりに深さがありそうな穴が至る所に開いている。「見事に浸食されていますね」と浅尾さん。
てっきりヘビか小動物の巣穴だろうと思ったのだが、川を流れる水が河床に浸透して少しずつ内部から浸食し、ある時期、こうしてぽっかり地表に空洞ができるのだと聞いて、ことの深刻さを悟る。
「ある日突然、がさっと崩れるかもしれませんよ」と浅尾さんの顔が曇った。
この調査は、最大都市ヤンゴンから首都ネピドーを通り、第2の都市マンダレーまで国土を南北に結ぶ約600キロにおよぶ幹線鉄道の改修計画の一貫として行われているもの。
このうちヤンゴン~タウングー間の約270キロについては、2015年に国際協力機構(JICA)の下で(株)オリエンタルコンサルタンツグローバルなどから成る共同事業体が詳細設計調査を実施。現在は施工に向けた入札支援が進んでいる。
この日の目的は、それに続くフェーズ2区間、すなわちタウングー~マンダレー間について、線路上に架かっている鉄道橋がどれぐらい経年劣化しているのか見た上で、補修して使えそうか、あるいは架け替える必要がありそうか分類し、概算コストを見積もるための現況を確認すること。