浅尾さんと一緒に2014年にフェーズ1区間の橋梁をすべて回った経験の持ち主だ。
佐藤さんによると、雨期には橋桁が半分近く水に浸かり、乾期も川底が見えるほど乾燥することがほとんどないフェーズ1の区間に比べると、この付近は乾期には川が干上がり、フーチングと呼ばれる橋脚の土台部分が露出するほど乾湿の差が大きいため、地盤が非常にもろくなっている上、レンガ造りの柱や基礎部分の劣化と腐食が明らかに進んでいるという。
そして2点目は、想定していた以上に速いスピードで浸食が進んでいるということ。今回ちょうど渇水状態で川底を見ることができたために分かったことだ。
実際、何本かの橋梁について、2013年9月に撮影した橋脚の周囲の写真と、今回撮影したものを並べてみると、違いは一目瞭然だ。
「川の流れに巻き上げられて見事に浸食されていますね」と浅尾さんが言う通り、川の流れによって河床が洗掘されないようコンクリートを貼って橋脚の周囲を強化した「水たたき」と呼ばれる部分も、わずか3年半の間に大きく崩れている。
このほかにも、この3~4年の間に河床が1~2メートルほど低下したため、橋脚を支える杭が大きく露出していたり、その周囲を使用済みのレールや木材で囲って補強したりしている箇所も見られた。
「比較的新しいはずの橋梁も、思った以上に劣化が進んでいます。このまま河床の洗掘が進むと、橋脚自体が不安定になりかねません」
「今回のフェーズ2で改修されるのを待っていると、3~4年は先になる。いくつかの橋梁については、次の出水期までに緊急対応を検討した方がいいとミャンマー国鉄に申し入れようかと調査団内で話しているところです」
こう熱く語る浅尾さん。その横顔には、この路線上の橋梁を知り尽くした「ミスター橋梁」としての真摯な思いと矜持が浮かんでいる。