まだ詳細設計前のフィージビリティー調査の段階であるため、全部で500橋を超える中から、橋桁が3スパン以上あるか、あるいは全長が30メートル以上の比較的大きな橋梁を事前に70あまり選び、3日間かけてインスペクション・カーで回っている。

 確認するポイントは大きく2つある。第1に、橋台や橋脚、地中の基礎部分、いわゆる下部工や、その上の上部工など橋梁本体が健全な状態にあるかどうか。

 第2に、付近の河床に浸食の兆候を示す穴が開いていたり、河床が水によってえぐられていたりしないか。これらの事項を忘れないよう時刻とともにその場で1橋ずつ記録シートに記入していく。

「ミスター橋梁」の矜持

 浅尾さんがこの幹線鉄道上の橋梁を見て回るのは、今回で通算4回目だ。民政移管によってテインセイン前政権が誕生し、日本が支援の本格再開を決めた2012年に経済産業省が鉄道事業の可能性を検討するために実施した調査に参加し、ヤンゴン~マンダレー間の全線を踏査。

 翌2013年には、JICAが全国を対象に実施した運輸交通分野のマスタープラン策定調査でも、同様にヤンゴンからマンダレー間を調査した。

 さらに、2014年にはこのマスタープランを踏まえて実施された前出の詳細設計調査のフェーズ1に参加。

下部工の状態が気になる時は、橋の下に降りて確認する

 ヤンゴン~タウングー間にある約260橋を1カ月かけてすべて調査し、詳細な橋梁台帳も作成した。

 そんな経験がある浅尾さんだからこそ今回気付いたことが2つある。1点目は、雨が多いヤンゴン側のフェーズ1区間と、中央乾燥地帯に位置する今回のフェーズ2区間では、損傷の進み具合がまったく異なるということだ。

 「そんなに違うのですか?」

 思わずそう聞き返した筆者に、(株)テイパープランの佐藤光さんが「橋にとってはずっと水に浸かりっぱなしの方がまだマシで、濡れたり乾いたりの繰り返しが一番良くないんです」と大きくうなずく。

1橋ずつ記録シートに状況をまとめる