実際、この問題については生理的な背景がきっちり存在しています。
「人差し指」で何かを差す行動とは、本質的に何であるのか、明らかにしてみましょう。
生命の進化と人間のアタマ
人類がサルではなくヒトらしいヒトになった、決定的な進化は「直立歩行」であったとされます。
2本の足で立てば、頭が肩の上に乗る。これが四つん這いだと、頭は前に下がってしまう。
犬や猫の頭はコンパクトです。だから機敏に走ることができ、獲物を捕らえるのにも便利です。これがゴリラやオランウータンだとどうでしょう?
彼らが走る姿は人間のそれにも通じますが、あまり格好のいいものではありませんね。でも彼らは頭蓋骨を背骨の真上、肩の上に乗せているので、頭が大きく成長し、脳が大きく発達する可能性を、人類の進化に与えました。
「個体発生は系統発生を繰り返す」という言葉があります。お母さんのお腹の中で精子と卵が結合した瞬間、まだ1個の細胞でしかない「胚」は盛んに分裂を始め、地球上での全生命の進化史をなぞり返しながら、その現時点での到達点である霊長類である人間、つまり私たちの体を作り上げます。
進化の結果、私たちは大きな頭蓋骨を持ち、大きな頭脳も持ち、高い知性も持って高度な文明生活を営んでいます。
しかし、赤ちゃんがこの世に生まれて出てくるとき、そんなに大きな頭では、お母さんの出産が大変です。仮に大人の頭が出てきたら、妊婦の産道は破れてしまうでしょう。
出産のたび、いちいちそんなに産褥のリスクが高ければ、とてもではないですが、過酷な自然の淘汰の前に人類は生き延びることができなかったに違いありません。
結果、人間の赤ちゃんは分娩時、まだ比較的小さな頭のまま、この世に生まれ出てくることになります。新生児の頭は継ぎ目がまだフカフカしていますよね。ああいうのを見ると、これから大きく育てよ! という気持ちになるものです。