お酢はいつから「健康によい」調味料になったのか?

調味料の名脇役「お酢」の歴史と科学(前篇)

2017.03.24(Fri)漆原 次郎

 一方で、もう1つの機能的側面、つまり、お酢が体の健康によいということについては、少なくとも江戸時代には、さほど説かれていなかったようだ。

 たしかに、1697(元禄10)年刊の本草書『本朝食鑑』の「酢」の項目には「諸瘡腫、積塊を消し、痰水、血病を逐ひ」とあり、腫れものや腹内のできもの、また水毒や血毒などによる病気に効果的としている。だが、1712(正徳2)年に刊行された百科事典『和漢三才図会』の「酢」の項目では、「多く食えば筋骨を損す。亦、胃を損す」などと、摂りすぎの不益も説いている。

寺島良安著『和漢三才図会』「酢」の項目。(所蔵:国立国会図書館)
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 明治時代以降の新聞記事にも当たってみた。古いところでは1937(昭和12)年2月22日付の読売新聞で、細菌学者の前田稲四郎が「少量の酢は人によってよく食欲増進の役目を果たします」と述べている。また1963(昭和38)年の同紙では、酢が疲労回復によいことを、法医学者の秋谷七郎が説いているところとして紹介している。いわく、米に含まれる珪酸が引き起こす動脈硬化を防ぐのに、お酢を飲むとよいとしている。

 江戸時代に「医者殺し」などと評された味噌などに比べると、お酢の健康効果への注目や関心は新しめのようだ。

(参考・関連記事)「毒を消し、医者を殺し、名将をも動かした味噌の力

 だが、だからこそ、現代の科学によって、お酢の機能性が次々と明らかにされているのではないか。そうしたことに期待をしつつ、後篇ではお酢を巡る研究に目を向けてみたい。

後篇へ続く)

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