桜前線が話題になる季節。和菓子コーナーには桜餅が並び、季節を感じさせる。薄い生地で餡を巻く「関東風」、もち米食感が残る饅頭に餡が入る「関西風」といったように、違いがあるのも楽しい。
自分の出身地にはないタイプの桜餅を見ても「桜餅だ」と認識できるのは、独特の色をした桜の葉にくるまれているからだろう。
しかし、全国各地にあれだけ桜の木があるのに、木についている葉っぱを見てとりわけ「おいしそう」と思うわけでもない。どうして食べもの葉っぱが使われているのか。桜餅をはじめ、食における「木の葉」の登場のしかたを探ってみた。
桜餅に使われる塩漬けの葉
桜餅の葉は、静岡県の伊豆が最大の生産地である。使われるのはオオシマザクラという品種だ。この地域の山野に自生していた野生種の桜の1つである。現在、桜の代表的品種になっているソメイヨシノの交配にも、このオオシマザクラが使われた。
桜葉漬を生産・販売している山眞産業は、オオシマザクラを「葉は大ぶりで幅広、柔らかくうぶ毛が少なく、甘く香る芳香成分・クマリンが多く含まれているので、まさに桜餅に最適」と賞賛する。同社の製品は伊豆半島南西部で栽培されたものを使っている。
葉を春のうちに摘み、食塩水で煮てから塩で漬け込むことで桜葉漬が完成する。最大の生産地である伊豆の松崎町あたりでは、畑地に桜の木が栽培されており、そこで桜葉漬の生産もされている。