注意しなければならないのは、「高い」あるいは「低い」といっても、それはヒエラルキーでの位置を示しているだけであって、情報が持つ価値の高低や、機密度の高低を示しているわけではないことである。

 そして、しばしば戦術レベルで必要とされる兵器や装備に関する技術情報には、極めて機密度が高い情報が数多くある。アメリカ国防当局の考え方によれば、むしろ戦略レベルの情報には極秘情報はほとんど存在しないのである。

ある米陸軍大将の指摘

 この点に関して、アメリカ陸軍のある大将(すでに退役)が筆者に語った興味深い話がある。この陸軍大将はオーバルルーム(大統領執務室)で直接大統領にブリーフィングをする要職にあった軍人である。

 彼が中国人民解放軍の将軍たちと懇談した際に、解放軍の将軍が「我々はアメリカが公表している国防戦略や各軍の戦略などには惑わされない」と真顔で大将に語りかけたという。その将軍は「アメリカが公表している国防戦略や各軍の戦略概要などはプロパガンダや謀略情報の類であり、真の軍事戦略は秘密にしているのは当然のこと」と信じきっており、大将が「アメリカが公表している各種戦略には嘘偽りはない」と言っても、決して信じることはなかったという。

 実際にアメリカ国防当局は以下のものについては公表しており(中国語版はないが)人民解放軍でも自由にダウンロードできる。

・アメリカ国家運営の基本方針の1つとしてホワイトハウスが策定する「国家安全保障戦略」(National Security Strategy)

・それを受けて国防総省が策定する「国家軍事戦略」(National Military Strategy)

・それを補完するためにやはり国防総省が策定する「4年ごとの国防戦略見直し」(Quadrennial Defense Review)

・各軍(海軍、海兵隊、陸軍、空軍それに沿岸警備隊)がそれらの上位戦略に適合させて策定した各軍の基本戦略