また、軍関係シンクタンクなどにおいても、米軍内部で「秘」指定が解除された資料を日本側当局者とのセミナー等で使用する際に、日本側の便宜を考えて日本語訳資料を作成して配布することも昨今では珍しくない。このような場合、アメリカ側の原本資料には「公開」指定がなされているのだが、日本側が持ち帰った翻訳資料には後から「秘」指定がなされてしまった、というちぐはぐな状態が考えられなくもない。

 実際に、幅広くメディア関係者に伝達されるであろうことを想定してアメリカ国防総省が実施した日本側当局とのセミナーの内容が、日本側メディアには全然伝わっていなかったという事例もあり、「何でもかんでも『秘』指定にしてしまう」傾向には危惧の念が持たれている。

 もっとも、このような“現場レベル”での実務的情報に関しては、日米間による具体的取り決めによって上記のような齟齬は解消可能である。現に日米間の合同演習の機会の増大や親密化に伴って、訓練や会合などでの情報資料の取り扱い状況の行き違いは改善しつつあると思われる。

レベルが高いほど秘密は少なくなる

 ただし、より高度な軍事情報についての取り扱いとなると話は別である。ここで「高度」というのは、例えば最新潜水艦の詳細な性能に関する情報や、使用されている鋼板をはじめとする技術情報といった機密度が高いという意味ではない。「戦略~作戦~戦術」ヒエラルキーでの位置を意味している。

 そのヒエラルキーは具体的には以下の通りにレベルが分かれている。

・国家戦略レベル
・安全保障戦略レベル
・国家軍事戦略レベル
・各軍の戦略レベル
・作戦レベル
・戦術レベル

 最も高度なのは国家戦略レベルであり、戦術レベルが最も低いということになる。