そもそもなぜ仏具が非課税なのか

 足元のイラン情勢は、金価格をさらに押し上げる要因となっている。金が今後さらに上昇するならば、過去に金の仏具を購入した人の含み益はますます膨らむことになる。しかし、仏具の加工賃を含めた購入価格が、将来の金価格上昇で回収できるかどうかは、誰にも予測できない。

 本稿で述べたいのは、仏具を使った節税法の推奨ではない。そもそもなぜ仏具が非課税なのか。この点をあらためて考えてもらいたい。それは「ご先祖さまを祀り続けたい」「心の拠りどころとしたい」とする宗教感情や慣習を、日本人が大事にしてきたからに他ならない。金の仏壇仏具は、それを極楽浄土に重ね合わせ、故人の供養になってこそ、有形無形の価値が生まれるのだ。

 イラン情勢が緊迫し、世界が不安に包まれる今だからこそ、仏壇に向かって手を合わせ、ご先祖さまの安寧と世界の平和を願いたい。その祈りの対象が純金であろうと真鍮であろうと、「祈りの価値」に変わりはない。金の値動きに一喜一憂するよりも、日々の供養を大切にしたい。それが、仏具を非課税としたこの国の税制の、本来の精神なのだと思う。

鵜飼秀徳(うかい・ひでのり)
作家・正覚寺住職・大正大学招聘教授
1974年、京都市嵯峨の正覚寺に生まれる。新聞記者・雑誌編集者を経て2018年1月に独立。現在、正覚寺住職を務める傍ら、「宗教と社会」をテーマに取材、執筆を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』『仏教の大東亜戦争』(いずれも文春新書)、『ビジネスに活かす教養としての仏教』(PHP研究所)、『絶滅する「墓」 日本の知られざる弔い』(NHK出版新書)、『ニッポン珍供養』(集英社インターナショナル)など多数。大正大学招聘教授、東京農業大学非常勤講師、佛教大学非常勤講師、一般社団法人「良いお寺研究会」代表理事。公益財団法人日本宗教連盟、公益財団法人全日本仏教会などで有識者委員を務める。