状況次第で1バレル=100ドルも
ロイターは25日「サウジアラビアは緊急時対応として原油の輸出を増やしている」と報じた。サウジアラビアは米国がイランを攻撃した昨年6月にも原油輸出を日量約50万バレル増加させており、関係筋によれば、今年の計画も昨年とほぼ同じ規模だという。
イランを始め中東産原油の大半が通過するホルムズ海峡にも注目が集まっている。
日量約1650万バレルの原油が運ばれるホルムズ海峡は全長約100マイル(約161キロメートル)で、最も狭い部分の幅は21マイルに過ぎない。水深が浅く機雷の脅威を受けやすく、通航する船舶はイラン沿岸からのミサイル攻撃や巡視船、ヘリコプターによる標的になりやすいと懸念されている。
筆者は「原油収入に依存するイランがホルムズ海峡を封鎖するのは自殺行為だ」と考えているが、米国とイランの軍事衝突のあおりを受けてホルムズ海峡の安全な通航が危うくなる可能性は十分にある。
最も多く通過しているのはサウジアラビア産(日量約500万バレル)だが、東西を横断して紅海沿岸の港に至る全長746マイル(約1200キロメートル)のパイプラインを利用し、迂回が可能だ。
アラブ首長国連邦もパイプラインでの対応が可能だが、輸送経路の変更・長期化が材料視されて原油価格が上昇する可能性は高いと言わざるを得ない。
エネルギー市場コンサルティング企業FGEネクサントECAのフェシャラキ名誉会長は23日、中東からの原油供給が混乱する複数のシナリオを示した上で、「状況の深刻度次第だが1バレル=90~100ドルは手の届く範囲にある」との見解を示した。
日本経済に深刻な打撃を与える原油価格の高騰が起きないことを祈るばかりだ。
藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。