危機管理会社が指摘する暴力団排除の副作用
危機管理会社SPN副社長で首席研究員の芳賀恒人氏は、SPNジャーナルの中で、暴力団排除の副作用を次のように指摘しています。
<暴力団であるがゆえに警察から厳しく締めつけられ、組織からも厳しくシノギを求められ、暴力団の影があれば商売が出来ない厳しい現状も、「離脱」によってそれらの規制やしがらみのすべてから開放されるのであって、「一人の方が稼げる」「楽に、手っ取り早く儲けられる」という状況を生みだしているのです。
それは、ある意味、離脱による「共生者」の創出、暴力団との共生関係も成り立たせるという側面(警察の取り締まりを逃れるために組と関係のない者として仕立て上げてシノギをさせ、暴力団としては、摘発されれば関係ないと切り捨てる構図)や、逆に暴力団と関係のない犯罪者たちとの連携を強めている側面(犯罪者の連携においては、元暴力団員であるかは関係がなく、奇妙な連携が自然に成立するという)という2つの相反する面があり、その多くは合法的な稼ぎとは言えない以上、暴排が進むことによって「社会の安全」に対する脅威が増すという皮肉な現実がもたらされていることが分かります(注:正に廣末氏の指摘する「元暴アウトロー」そのものを表しています)。
いわば、「更生」=「暴力団からの離脱」という「形式」的なレベルにとどまり、本来の、事業者として関係をもつべきでない「反社会的勢力」という「実態」からみれば何の変化もないと言ってよく、「暴排は進展しても反社排除は進展していない」、あるいは、「離脱と更生の意味が大きく乖離している」とも言い換えることができるかと思います>(SPN JOURNAL「暴力団離脱者支援を巡る動向と今後の課題」2022年5月10日)。
特殊詐欺の被害額は7年間で約10倍
芳賀恒人氏が指摘する通り、昨今、社会の安全に対する脅威は急速に増しています。2024年における特殊詐欺の被害総額は718.8億円でしたが、2025年の被害総額は1414億円と、ついに1000億円を突破しました。ちなみに、2019年(令和元年)における特殊詐欺の被害額は315.8億円でした(「警察庁捜査第二課 生活安全企画課 令和元年広報資料」)。7年間でおよそ4.5倍になっているのです。
暴排一辺倒では犯罪を減らせないことが様々な経験から、過去のデータから分かりました。そうであるなら、「離脱と更生の意味が大きく乖離している」現状を是正し、犯罪を減らすためには軌道修正する必要があるのではないでしょうか。
それはたとえば、平成28年に警察庁が言及したように(警察庁組織犯罪対策部「平成28年における組織犯罪の情勢」)、真の安心・安全社会を目指すためには、ただ、反社や元反社の者を排除するだけではなく、「就労支援等の社会復帰対策を一層推進するなど、総合的な治安対策が必要である」という知見を、今こそ実践する必要があると考えます。