「フランスの核の傘」による欧州防衛も視野
ことし2月のミュンヘン安全保障会議で、フランスのマクロン大統領は、ロシアとの「共存」に向けた同盟の再構築を呼びかけました。「もしウクライナ戦争が終結しても、われわれは高血糖で興奮したかのような防衛産業と肥大化した軍を持つ侵略者ロシアと対峙しなければならないのだ」として、欧州がまとまり、一定規模の勢力となるよう提唱したのです。
その中心となるのはフランスとドイツでしょう。
ドイツは第2次世界大戦後、核を保有しない姿勢を鮮明にし、他国の核抑止力を頼りにする立場を取ってきました。しかし現在は安全保障面での米国依存を修正し、欧州全体を「フランスの核の傘」で守ることも視野に入れています。
一方、英国とフランスは2025年7月の首脳会談で「ノースウッド宣言」を発表しました。両国は政府高官級の「核運営グループ」を立ち上げ、核をめぐる2国間協力と欧州の抑止力強化を協議しています。両国は核を自国の防衛だけでなく、欧州の安全保障に役立てることを主眼とするようになってきたのです。
ただし、米国との関係をこれ以上悪化させたくないのも欧州の本音です。
ミュンヘン安全保障会議では英国のスターマー首相が、欧州の安全保障に対する米国の80年にわたる貢献を称え、米国による欧州関与の重要性を強調しました。一方でスターマー首相は「(欧州は独自に)戦う準備をすべきだ」とも言及。米国をつなぎ止めつつ、独自の安全保障を構築しようとする欧州の複雑な立場を浮き彫りにしました。
欧州を一気に不安定化させたウクライナ戦争はこの2月24日で5年目に突入しました。米国の仲介による交渉は続いているものの、戦争は今も出口が見えません。ウクライナ戦争が解決に向かうのか、それとも核戦争のリスクが高まるのか。予断を許さない展開はまだ続きそうです。
西村 卓也(にしむら・たくや)
フリーランス記者。札幌市出身。早稲田大学卒業後、北海道新聞社へ。首相官邸キャップ、米ワシントン支局長、論説主幹などを歴任し、2023年からフリー。日本外国特派員協会会員。ワシントンの日本関連リサーチセンター“Asia Policy Point”シニアフェロー。「日本のいま」を世界に紹介するニュース&コメンタリー「J Update」(英文)を更新中。
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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。